5
画面に映った文字への理解度が足らない私は首を傾げた。
『幸せになりたければ、この人の人生を台無しにしてください』
読み直せば読み直すほど意味がわからない。
てかこの人誰よ?そもそも。
どっかで見た事ある気がするんだけどな。
頭を傾げながらたどたどしい記憶力を辿る。
「―――あっ」
携帯のホームボタンを押して画面を戻してみる。
先ほどまで動かなかったスマホが拍子抜けするぐらいに簡単にホーム画面に戻る。
素早い動作でSNSを開く。
たしか…この辺に…あった!
とあるフォロワーさんの画面である。
先ほどの画面と行き来して顔を見比べてみる。
「やっぱり…一緒の人だ」
最近フォローしてくれた人の一人である。
…この人の人生を台無し?
理解不能な画面は私の疑問を更に深める。
なんか新手のウイルスかなんかなのかな?
「いや、待てよ」
今置かれている状況下で何能天気な事言ってんだ私。
どう考えても今の私の姿と何かしらの関連性はあるはずだ。
だけど…
「…わかるかぁ!!」
考えてもわかるわけないだろ!
まず人と入れ替わるって何よ!
どこのアニメの世界だよっ!
夜中だというのに叫び散らしながら頭を掻く。
少しばかり落ち着いた私は、目の前に自分の家が近づいてきた事に気づいた。
代り映えしない私の家。
一人暮らしというのに一軒家。
もちろん私がそんなにバリバリ稼いで建てたかっていうとそうじゃない。
全ては親が勝手にしたことである。
まぁ今この話をしたところで何も解決しないので割愛するけどね。
「というわけで、お邪魔しまーす…」
ソロリとドアノブに手をかけた時だった。
「ぎにゃっ!?」
不意に電気が流れたような衝撃を受け、猫のような声を発してしまう。
そのまま私はスローモーションのように仰向けに倒れ…あ、これはやばいわ。
そのまま意識は闇の中に落ちていった。
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「んぅ…」
まるで暗闇の中を宛もなく彷徨っているようだった。
出口のない迷路。
そんな感じの印象を受けたような夢の中。
ここ数年で慣れてしまった一人暮らしの寂しさ。
そんな感情も凌駕するような不安と焦り。
その中で私は今日も夕方に起きる。
「…結局夢オチっていうパティーンですか」
時計に目をやると時間は夕方の5時半を指している。
どうやらバイト先への電話の後そのまま寝てしまったようだ。
しかしえらくリアルな夢だったなぁ。
この人の人生を台無し…かぁ。
鏡をチラッと見てみる。
よし、いつも通りの私のプリティなお顔。
ぐーっと伸びをし、あくびをしながらも立ち上がる。
いつものような気怠い感じはなく、なぜか清々しい気分だった。
「さてと…今日は何を…ん?」
いつものように怠惰な休日を満喫しようかと思いスマホに手をかけた時だった。
画面に映し出されている日にち。
―――10月12日。
…確か今日の日にちって、11日じゃなかったっけ?
「まる一日寝てたって事?」
まぁ結局一睡もできなかったしなぁ。
しょうがないっちゃしょうがないよね。
………。
「しょうがなくねえよっ!!」
一人ツッコミをしながら私は慌ただしく準備を始める。
化粧もせずに、とりあえずマスクと眼鏡をかけて家を出た。
今日バイトの日だ。
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