3

「…けほっ」

風邪ひいた。

結局帰ってきてから恐怖で中々寝付けなかった。

正直、普通の人だったのかもしれない。

ただ全身黒ずくめの恰好が好きだった人かもしれない。

―――だけど…。

「あの話の後じゃあなぁ…」

しょうがないよね。

だって全身黒ずくめだよ?

しかも夜中にあんな恰好で歩いているなんてくっそ怖いじゃん。

あー…しんどいけどバイトいかないといけないかなぁ。

今日新人来るって言ってたし、正社員とはいえ私が出勤しないとまずいよなぁ。


『最近不審者がいるらしいから』

……休もう。

店長の昨日の話が頭から離れない。

昨日の帰り道の光景が鮮明にフラッシュバックしてくる。

得も知れない恐怖に駆られた私は、思わず二度寝をしようとする…が。

「あ…連絡しなきゃ」

スマホを手に取り、バイト先のコンビニの番号を電話帳から探す。

登録されている番号が少ないので、割とすぐに見つける事ができた。

呼び出し音が虚しくも響く。

…長い。

元々あのコンビニには勤務している人が少ない。

私の時間帯もそうだが、常時入っている人は1人~2人ほどしかいない。

他のコンビニがどんな感じなのかは知ったこっちゃないことだが、接客に出ている際には電話を取る事はできないだろう。

1分ほど鳴らしたところで、ようやく電話が取られた。

『お電話ありがとうございます。ニコニコマートでございます』

「あ、店長ですか? 新島です」

『あ、お疲れさん。どしたの? えらく鼻声だね』

「はい、実は風邪ひいちゃって…あと、昨日帰る時にかくかくしかじかで」


正直報告の義務などはないのだが、一応店長に昨日の事を話しておいた。

これを機に、これから帰る時に送ってもらえたりするとありがたいかなぁなんて思ったりする。

『ええっ!? そ、それは災難だったね。大丈夫かい?』

「はい、なんとか。でも怖かったです」

『そうか、まぁ大事がなくてよかったよ。そういうことならわかりました。今日はゆっくり休んで』

「すみません。ありがとうございます」

軽く礼をし、蒲生さんとの会話を終える。

携帯をテーブルに置き、部屋のソファーへもたれかかる。

「はぁ…」

身体がだるい。だめだ、これ寝たほうがいい。

いつもの睡眠不足と違ってこれはかなりタチが悪いほうだと私でも気づいた。

身体が思ったように動かない。


ノソノソと亀のように這い、敷きっぱなしの布団に寝そべる。

…眠れん。

眠たいのに寝れないてどうよ。

しょうがないから今日何回目かわからないSNSを開く。

フォロワー数は…さすがに増えてないか。

改めてみるとフォロワーがかなり多いな。

2000人…か。

もう誰が誰だかわかんないや、

指で画面をはじきながら画面を流す。

基本的にROM専な私は、自分から呟く事なんてしない。

別にみんながうけるような話題も持ち合わせていないからね。

「くぁ…」

なんか眠たくなってきた。今なら寝れそうな気がする。

てか、あれ?

なんか画面が異常に明るい気がする。目がちかちかしてきた。

「―――っ」

いや、これ光りすぎだよ!蛍光灯よりも光ってるよ?

突然のスマホからの発光に、私は意識を手放した―――

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