HalloweenMagic★2017

「ねぇ、学校でパーティーしよ?」

 ……誰だっただろうか。

 唐突に、そんな馬鹿げたことを言い出したのは。

「楽しそうww」

 その、馬鹿げた提案に一番最初に心をときめかせた阿呆は、今頃何を考えているだろうか……。



 高校1年。

 全国各地から、色々な事情を抱えた人間が多く集まるこの高校で、今のところ不自由な思いをした記憶はない。

 人間関係も良好だ。

 入学式の前にオリエンテーションがあった。その時に、誰かが始めたSNSのグループ作り。

 そして、誰かが「皆がいるグループ作ろう」と言いだし、入学式の前から、ほとんどの1年生は繋がっていた。

 コワモテで敬遠されそうなヤツや、暗くて地味そうな女の子も。あらかじめSNSで繋がっていたおかげで、良いヤツなのはわかっていたし、みんなそこそこ仲がよく、いじめもない。


「企画はもっと早くだしなさいよ……」

 先生の顔を思い出す。

 規則はしっかりあるけれど、規則さえ守っていれば基本的に色々な許可がおりるこの学校。

 昔は髪の色とか色々こまかかったらしい規則は、規則を守る生徒からの提案や説得により徐々に許可がおり、規則から消えた。

 毎年受験生は多いが、この学校は学力等の試験よりも面接を重視している。

 そのおかげで、私も入学できた。




 夜。

 お菓子を作ることになった私は、一緒に作るメンバーで何を作るか話し合っていた。

 材料の計算をすると、数が多いこともあり、かなりの額になった。


「お金足りなーい!」


 クラスのグループにメッセージを送ると、すぐに返信がきた。


「お菓子だよね?後で割り勘で払うから、お菓子班で誰がいくら出したかレシートと記録残しておいて!」


「お菓子代、私が全額出すよ!バイトでバイトであまり準備できないからそれくらいさせて!」


「何のためのバイトだよww金無くなんぞw」


「後学のためのバイトだし、お金は問題ないよ!」


「さすが姫さんw」


「あー、そっか、お前は家がアレだもんな」


「それなら準備も参加すればいいのに」


「はぁ?急だったからほとんどシフトはいってんの!31日の休みだって、無理いってかわってもらったんだから!」


「ごめんごめんw知ってますwお疲れさまでーすww」


 あっという間に人が集まる。

 私たちは話に夢中になってしまう前に離脱することにした。


「ありがとう!!姫さま大好きー!!」





 ハロウィン当日。

 それぞれ仮装して、パーティーは順調だった。

 ……そう、この時までは。

「肝試しです。この学校のどこかにいる先生に、このお菓子を渡して、自分が仮装したのは何かを言ってきてください!制限時間は1時間!よーい、スタート!」

 順調だったのだ。

 時間になって、先生が戻ってくるまでは。

「皆、見つけるのうまいのね!皆に見つかるなんて」

 先生はお菓子を手にそういった。

 みんなが、「おー」「やったー」と思い思いの反応を見せる中、二人の生徒が困惑していた。

 それに気づいた私が「どうしたの?」と声をかけた。

「俺、先生見つけてないんだけど」

「……ねぇ、先生って、ずっとこの格好??」

 言葉の意味がわからず、先生を呼ぶ。

「先生!」

 私の声に、何かを感じ取ったのか、クラスの皆が「どうしたの?」と言いたそうな顔でこっちを見た。

「先生、着替えてないよね?」

 私の言葉に、先生は「もちろん」と答えた。

「……あいちゃんのこの格好見た覚えある??」

 言われて、あいちゃんを見る先生。

 そして、首をかしげた。

「えーっと……あれ??ウォーリー、だよね?」

 あいちゃんは「はい」 とうなずいた。

「……おかしいわね。たしかに、人数分……」

 それは、その仮装が記憶にない、ということだろう。

「先生、それだけじゃないです。俺、先生に会ってない」

 黙っていた黒井くんは、自分の口で告げた。

 その格好は、華奢な身体から周りに提案され半ば強制的に選ばれた仮装……「トイレの花子さん」。

「あら。花子さんなら覚えてるわよ。声も女の子の声みたいだったから、よく覚えてるわ」



 その後、花子さんは本物が来たんじゃないか、という話になった。

 こればっかりは、それ以外に考えられなかったのだ。場所も先生がトイレによった時だったようだし。

 あいちゃんの件は、布を被っただけの仮装とも呼びづらいお化けの人数があわなかったから、誰かが二回渡して、知らんぷりをしてるんじゃないかということにした。

 というか先生が、そう望んだ。


 実は、この事件、これでおわりではなかった。

「ねぇ、このお菓子、誰??」

 帰宅後ほどなくして、グループに送られたメッセージ。

「鞄に入ってたんだけど」

「あ、私も入ってる!」

「同じくー」

「犯人は誰だー?」

 それは、皆の鞄に入っていた。

 そして、誰も見覚えのないものだった。


 後日、先生に聞くと、先生も知らないようだった。

 結局、犯人はわからなかった。

花子さんのこともあったから、ハロウィンの魔法ということにして、このハロウィンパーティーの事件は幕を閉じた。


──来年もまたやってね。私たち、待ってるから……。

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とりっく おあ とりーと 如月李緒 @empty_moon556

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