農民たちの収穫祭★2016
秋。仕事も一段落し、落ち着いてきた今日この頃……。
農民たちはカレンダーをみていつの間にか10月も終わりが近づいてきていることを知った。
「お、木下さん。調子はどうだい?」
「今年は豊作ですな。川上さんは??」
集落のあちこちで、穏やかな時間が流れる。
「もちろん、豊作ですよ。……まぁ、今年はどの家も豊作なのでしょうね」
農夫 川上は空を見上げる。
今年は天候が穏やかで過ごしやすい1年だった。農作物も、例年以上の豊作が期待されるほどに。
「……そういえば、聞きましたか??今年の感謝祭は近隣の集落も合同でやるみたいですよ」
木下は一番近い集落の方角を見つめる。
「ほぅ。それは初耳です」
川上は興味深そうに木下の言葉に耳を傾けた。
「どうや、交流会もかねていて作物の交換もあるようです」
木下の家は
川上は遠くを見つめながら言った。
「それはそれは。楽しみですなぁ~……」
集落の女子供は合同の"大収穫祭"に向けて準備を勤しみ、男は力仕事に駆り出されていた。
大収穫祭では、集落ごとの特色をいかすため各自準備を進めていた。
川上や木下の集落ではカボチャが収穫祭の象徴だった。
始まりは傷ついたカボチャだった。
それを見た子どもたちが顔みたいだと言ったのだ。
ここの集落はカボチャを作っている家が多い。
そして、傷ついたカボチャも毎年必ず一定数あり、それを並べると子どもたちはカボチャのオバケだとはしゃいぐため、いつからかカボチャが収穫祭の主役に君臨した。
「子供たちは楽しそうですね」
川上はカボチャ運びで呼ばれていた。
そこにはカボチャを前にはしゃぐ子どもたちがいる。
それからほどなく、大小様々なカボチャを前に作業を始めた子どもたちは、いつの間にか集中して一言も話さずに没頭するようになっていた。
「じい様ー!できたよー!!」
子どもたちが熱中して作業をする中、1人の少女がカボチャを抱えて長の元に駆けてくる。
「……ほぉ、良くできておるな」
一方、隣の集落───。
「ほら、みんな、頑張るわよ」
お母さんと一緒にお菓子作りをしているのは女の子たち。
その集落では収穫祭の主役は小麦だった。
女の子達はお母さんとともにお菓子を作り、料理を作る。
男の子達はお父さんたちとともに祭の準備を手伝っていた。
合同収穫祭に参加する各集落が、祭に向けて準備をしていた。
10月31日。
昼間は夜の準備の
そして、夜。
各集落の収穫祭の特色が絶妙に混ざりあい、
「よかったら、クッキーいかがですか??」
「我が集落では、収穫祭の時は小麦でお菓子や料理を作り宴を開くのです」
子どもたちがはしゃぐように、大人たちは大人たちで交流を楽しむ。
「いいですね。我が集落のパンプキンパイもぜひ召し上がってください」
作物や収穫祭のために用意した料理を振る舞ったり、
「子どもたちが作ったという
「あなたのところのカボチャも可愛らしい顔ですね」
己の集落と比較したり、子どもたちのほほえましい姿をニコニコと見守ったり。
子どもたちは子どもたちで、新しい友達を作ったり、自分の集落の収穫祭を教えてあげたりと、それぞれ楽しんでいた。
「僕たちの集落では、こうやってオバケの格好をして……」
シーツを被る男の子。
「楽しそうっ!」
仮装に興味を示す女の子。
「私のところではこうやって…………踊るんだっ!」
集落に伝わる収穫祭の躍りを披露したり。
それぞれ思い思いの収穫祭を満喫した。
「……ねぇ、このカボチャ、下に穴あけてもいい?」
子どもたちは、大人にはない柔軟な発想を見せる。
「どうするの??」
「これをかぶって驚かして遊ぼうよ!!」
そう言った男の子の目はキラキラと輝いている。
「いいね!楽しそう」
男の子の言葉に、周りにいた子どもたちも目を輝かせる。
「じゃあ、私はこのかわいいカボチャをかぶって踊ろうかな」
「じゃあ、俺は───」
その後……
収穫祭は毎年合同で開かれるようになり、どこかの集落が不作の時は今まで以上に協力し合うようになったのだった─────。
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