魔法使いのカボチャパーティ★2016 後編

 前夜祭もといハロウィンパーティが終わり、茜たちは早急に帰宅した。

 道中、茜は笑顔であったが碧はいないし空はしゅんとしていた。

「来年頑張るもん」

 空はどうしたのかを聞いても"来年頑張る"としか言わなかった。

 ……しかし、師匠は知っていた。

 最後の最後にドーンといたずらを返されたことを。───というより、その仕返しにこっそり参加していたりする。



「さて、寝るか」

 帰宅後、小瓶から碧をだしそのまま寝室へ連れていく。

「時間になったら自分で起きてきな」

 碧を部屋に寝かせた師匠は2人に声をかける。

 茜が「今年も0:00まで?」と聞くと「当然だろう?」と笑う。そして「おやすみ」と言って2人の目の前から消えた。



 午後6時、ハロウィンパーティの準備をする。

 ……正しくは、透明化の魔法をかけて宙に隠していたものを動かしたりするだけなのだが。

 そこに、茜が起きてきた。

「師匠、あのね……!」



 空は目が覚めると時計をみて急いで広間へ向かった。

 時間は午後10時。パーティはあと2時間しかない。

「ハッピーハロウィンっ!!」

 "おはよう"の代わりにそう言って、広場に入る。

 そこではマイペースな碧と楽しそうな茜がパーティを楽しんでいた。

「遅いじゃないか。さて、今年は1人1つ以上魔法を使って盛り上げることが参加条件だ。空は何を見せてくれるのかな??」

 師匠の言葉に空はさっと魔法を使った。

 それは幻をみせる魔法。オバケや虹、悪魔など、様々な幻が現れる。

「よし。合格だ」

 空は師匠の言葉をスルーして料理のもとへとんだ。

「いただきまーす!」

 切り分けられているパイを手に取り、口へと運ぶ。カボチャのほのかな甘みが口いっぱいに広がった。

「おいしーい」

 テンションがあがる茜。しかし、次の瞬間、さらにテンションがぐーんと上がった。

「うおっ!?」

 今食べたはずのパイが復活していたのだ。

「私と師匠の魔法だよ!0:00まではいくら食べてもなくならないの」

「茜、そんな魔法いつの間に…」

 空の言葉に碧が返事をした。

「茜ちゃん……たくさん、魔法、使う……だから、上達、早い……」

 碧の言葉に茜は、頬を染めて「えへへ」と照れた。



 空を舞うジャック・オ・ランタン。

 決してなくならない料理とお菓子。

 魔法で彩られた不思議なパーティは、笑顔がたえなかった。

 しかし楽しい時間は過ぎるのが早い。

 ふいに0:00を知らせる鐘がなった。

 料理は泡となり消え、ジャック・オ・ランタンはテーブルに着地する。幻は消え、ハロウィンパーティは終わりを迎えた。



「今年のハロウィンパーティはカボチャパーティだったね」

 終わってしまったパーティの余韻に浸る茜は、テーブルに並ぶジャック・オ・ランタンを見つめていた。

「来年、は……カボチャ……だけ、じゃ……ない……よね?」

 碧の言葉には「カボチャは飽きた」と言外に言っているようだった。

 その言葉に、師匠は空を見て、言った。

「文句なら空に言ってくれ。空のせいで材料がカボチャしかなかったんだ」

 空は苦笑いをこぼす。

「あははは……ごめん」


 楽しい夜は終わり、またいつもの日常修行の日々が訪れる。

 ハロウィンの魔法は解け、4人の魔法使いは余韻の中、ゆっくりと眠りに落ちた。

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