間章:スパーク・ザ・バトルフィールド

序:ある刀士の願い

 皆、集まったな。

 今日は写真を撮って貰おうと……クレイ、オズ、嫌な顔をしないでくれ。

 ルチア、逃げなくて良い。君もちゃんと写るんだ。

 平時に四人で撮る機会はそうない。ほら、笑って――


                  ◆


 ……これは、うん、なかなか面白いね。焼き増して君達にも渡すから、紛失しないように。これは隊長命令だ。

 どうしていきなり写真を? クレイ、そこに理由は必要かな? 

 ……って、ルチアもオズもそんな顔をしないでくれ。分かった、話そう。


 我々四天王の主たる任務は戦闘だ。


 戦場に絶対など無い。四人の誰もが、何処で命を落とすかを予測することなど不可能だ。不可避かつ理不尽な死は、私達にも平等に訪れる。

 貴女だけは有り得ない、か。君がそう言ってくれることは嬉しいよ、オズ。けれども、私とて生身のヒト。それに、祖国で素晴らしき先達が命を落とす様を見ている。自分だけが死を永劫に回避できるとは思えないよ。


 あぁ、ルチアは気付いたようだね。流石に察しが早い。


 こうして四人全員が一緒に行動出来る時間は、アークスやインファリス大陸。そして、世界の情勢によって左右されるだろうけれども、大きく増えることはないだろう。無論、任務よりも優先される物はないから、そこに不満を言うつもりはないよ。

 でも、私達四人は『四天王』として隊を組み、多くの時間を共に過ごしている。

 生まれも育ちも戦い方も。何もかも違う私たちがこうしていられる時間は、何物にも代えがたい大切な時間だと思う。

 例え道を分かつ事になっても、数多の戦場を超え、多くの時を過ごして築き上げた絆は壊れない。困難が訪れた時は、必ず結集して戦おうじゃないか。

 どんな力よりも、どれだけの富よりも、私達の絆は大切な物だ。 

 それだけは絶対に忘れないでくれ。


 ……すまない、折角の休暇なのに退屈な話をしてしまったね。

 店の予約は済ませているから、食事に行こうか。

 写真は三日後に焼き増しされた物が届くそうだ。さっきも言ったけれど、絶対に紛失しないようにね!


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