第2話



彼女







先日、小林に「彼女」、できた。

小林はそれを真っ先に僕に報告してきたんだ。

「 横山さんと付き合った!!!」と。

時刻はとうに12時を過ぎた真夜中。

何だ、そんなことで僕の睡眠を妨げるなよ…と「良かったな。がんばれよ」

短めに返信をした。


彼女ができてからというもの、いつも僕と登校し、下校していたくせに、「ごめん、みかと帰るから」真っ先に教室を飛び出していくようになった。

みか、とは横山さんの名前で横山さんは隣のクラスの美少女だ。

小林も、性格こそどうだかわからないが、ルックスだけはうちのクラスでも群を抜いて良かった。だから巷じゃお似合いのカップル、美男美女だ なんて騒がれていた。


それから1ヶ月ほどたったある日のことだった。

小林は妙に焦っていた。

「どうしたんだよ、小林。

何かあったのか?まさか彼女とでも別れたか?」

焦る小林にクラスメイトの佐野が冗談混じりに聞いた。すると小林は

「いや、何でもないんだ。ああ、なんでも…」

と、冷や汗を吹かせながら真っ青になるのだった。


その日のお昼休み、一人急いで教室を飛び出していく小林が気になって、僕は密かにあとを追いかけた。

小林はなにやらひとりブツブツ「なんでなんでだよ…!」と呟いて屋上へ着くと「みかっ!」

と声を上げた。

でもそこには 横山さんはいないし、人は誰1人いなかった。

ただ、ひとつ、藁人形が転がっていただけで。


小林はその藁人形を拾うと 「みか…!みか…!これはみかなのに…!なんで誰にも見えないんだよ!」

と藁人形をギュッと抱きしめた。



その数日後、小林は交通事故で亡くなった。

なんでもその小林を轢いたトラックは横山さんのお父さんの会社のトラックだったらしいね。




ああ、この話の意味がわからないって?

そんなの僕もわからないよ。

まあ要するに、横山さんは小林だけに見える藁人形になっちゃったんだよ。

まあ、いまその藁人形を持っているのは僕なんだけどね。

毎日、日に日に藁が解けて、明日にはもうなにもなくなるんじゃないかなあ。




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零れ話 vivi @vivi_n2

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