ただいま

「主、おかえり!」

「ただいま、いさなくん」


 玄関先で出迎えてくれた青い着流しに割烹着姿のいさなくん、その手に持ったおたまに苦笑する。まったく、どこの新妻か。


 学校の最寄り駅から電車で3つ目の駅、そこから歩いて15分ほどのところにある一軒家にあたしといさなくんは住んでいる。


 あたしが西園寺家を出ると言った時はものすごく反対したのに、自分が憑いていけるとなった途端手のひらを返したように強引に話を進め。この一軒家だけでなくいさなくんが住んでいるように装っている、裏のマンションのワンフロアまで買い上げてしまった。いさなくんって本当に変わってると思う。ていうかやることが大きい。


 いくらあたしが大きくなって自分でできることが増えたと言っても、人のお世話なんかしたくないだろうに。そういったら「君の世話だからしたいんだ」と真顔で言われてしまった。


「風呂と食事、どちらがいい?」

「うーん、じゃあごはんで」

「わかった、手を洗って席についていてくれ」


 後ろ手にがちゃんと鍵を閉めながら、あたしは靴を脱いで框にのぼって。まずは手を洗いに洗面所へと足を進めた。

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