第1章 妹の埋葬

   1


石畳を雪が覆う。


煉瓦造りの家屋の並ぶ街。


街外れにある僕達の家は、

便利こそよくないけれど、

手頃な家賃だったようだ。


両親は共稼ぎだったので、

僕達兄妹が留守番をした。


高い暖房費を節約するため、

二階の子供部屋で過ごした。




   2


窓の黒い桟にも、

雪が積もっていた。


鉄製の石炭ストーブで、

薬缶が音を立てている。


氷った窓硝子越しに、

子供達は外を眺める。


少年の髪は金褐色で、

少女はきれいな金髪。


どちらも青灰色な彼らの瞳が、

白い荒野と木々を映していた。


風とともに辺りが、

白い闇で覆われる。


「お兄ちゃん! あそこ、鳥!」


少女が叫んだ。


「馬鹿だな、吹雪だよ。

鳥なんてとばないさ」


少年が笑う。


「ほんとよ、まっ白い鳥よ。

あそこ、とんでたんだから」


少女はいいはった。



   3


それから間もなく、

少女は熱病に罹り、


目ざめることない儘、

その息をひきとった。




   4


彼女の棺に掛けられる、

冷たい土を眺めながら、

少年は心の中で呟いた。


「いまここに、

埋められるのは、

あの子じゃない。


本当の――は、

ノゥスィンカが

つれてったんだ」



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