ノゥスィンカの小鳥――人形の魔女とできそこないのメイド

プロローグ

プロローグ 人形の魔女

小鳥よ、小鳥。

魂の小鳥。

お前は何処（どこ）へ

とんでゆく。

小鳥よ、小鳥。

魂の小鳥。

きれいな声で、

歌っておくれ。

ある民族の信仰じゃ、

人が死んだら、

魂は鳥になるそうです。

『金枝篇』って本にありました。

――さて、こんなお話

いかがでしょうか？

昔々、ノゥスィンカという、

力のある女魔法使いがいて、

北の果の館に住んでました。

彼女の魔法は、

人形を造って、

操る力でした。

人間の体は不便です。

年を取ったり、

病気になったり、

死んだりします。

だから、自分を人形に変えたのです。

けれど、作業をしているうちに、

魂を何処かになくして終います。

魂のない人形の魔女は、

魂が欲しく堪（たま）りません。

吹雪の夜に、

小さな少女をさがし、

自分の館につれていきます。

そして、魂を鳥籠に入れ、

体を人形に変えるのです。

小鳥よ、小鳥。

歌っておくれ。

おまえの声を

聞かせておくれ。