ほほう


タイトル、コピー、概要、タグ、目次のエピソードタイトル。表紙のそれらからこの作品がいかなる内容かまったく掴めないではないですか。これはもう黙って読むしかない。そんなこころづもりで腹をくくって読み出したのですよ。

いいね。すごくいい。真摯に受け止め読書した、という確かな手応えが返ってくる。読書とはこう自分と異なる誰かの人生の切り取った短い時間を旅して自分に帰る、そういうものであるとすればこれはまさしくそんな小説で、いい旅でした。旅の途中主人公にたくさんの声をかけて自分はこう思うよ、と必死に叫べど届かず、その涙もどうしてやることもできず、見届けることしかできない無力な自分も最後にはすっきりとした気分で満足できました。すごくいい。丁寧でいい仕事。ぜひ読んでほしい。