World of 〝Dolleam〟

りあん

第0話 開演挨拶

やみのなかにいました。


くらく、くらく、またくらく。

ほうこうかんかくは、とうにうしなわれ。

いろ、という、がいねんすら、おもいだすことができず。

じぶん、という、そんざいすら、とけて、きえてしまいそうな、やみのなかに。

わたしは、いたのだとおもいます。

もっとも、やみをしょうめいするしゅだんは、ないのだけれど。


やがて、やみは、かたちを、いばしょを、そんざいを、もとめました。

ふあんていで、ふていけいなやみは、みずからを、しょうめいするものが、ほしかった。

だから、やみは、わたしになろうとしました。

やみが、わたしにふれ、わたしのてあしをつつみ、じょじょにつめたくなるこどうを、のみこんでいきました。


けれど、わたしはそれに、あらがった。


わたしは、『夢』をみたのです。


やるべき事があるのです。やりたい事があるのです。ここに、いたくないのです。きっと、きっと、わたしは。だから。


前に進みます。闇に行き止まりはありません。

後ろを振り返ります。闇に道なんてありません。

それでもわたしは自分の見つめる先を前だと信じて、駆け出します。


やがてやみの先に、一筋の光を見つけるまで、どのくらい走ったのか、記憶にありません。

やみに突如として現れた光は、淡く、儚く、今にもきえてしまいそうな、けれど、確かに光なのです。

光は、わたしに確信を抱かせます。



───あの光まで辿り着けば


わたしは『貴方』ともう一度────



無我夢中で光に手を伸ばし、きえゆく光を抱きしめるように、縋り付くように抱え込むと、目の前の世界が白く染まります。


眩しさと暖かさへの驚きは、しかしすぐに安堵へと変わっていきます。

背後にあったやみは、いつの間にかなくなっています。



そうして、私は、光のなかにいるのです。


暖かい暖炉であったり、きらびやかなお洋服であったり、街の笑い声や話し声であったり。

規律や統制、冗談にお祭り、虹や宝石であったり。

やみからそれらを護る、『彼』であったり。


私は、光のなかに生きる『夢』を得たのです。



けれど。


わたしには光は眩しすぎたのでしょうか。

それとも、光を『夢』みてはいけなかったのでしょうか。



私は、『貴方』を忘れてしまいました。

わたしの『夢』を忘れてしまいました。



天使の統べる天空。

悪魔の統べる地底。

妖精の統べる幻想。

それらを創り出した、『人形師』。


全てを喰らう、やみ。



はじめまして、世界。

『人形』Lapoupeeと、申します。

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