美しい文章と、美しい景色と、美しい物語。モノクロの世界で生きていた少年は、とある経験をして、世界に色彩を取り戻します。沖永良部島に行ってみたくなる、そんな美しい作品です。
主人公である少年が、沖永良部島を通じて、人生観の変化が見て取れる小説です。モノクロームの世界で生きてきた少年が、島の美しさだけでなく、そこで感じ取った人間のあたたかさを通じて人生観が彩られていきます。「眼鏡を外す」という比喩に乗せて、少年の受動→能動への変化を表現しているのが絶妙で印象的です。私も、こんな人生の転機になるような旅、またしてみたいです!
淡々と語られる一人称の感情と、対極的な圧倒的な自然。主人公の心に次第に様々な色が映し出されるのを感じた。
鹿児島県とは言っても、ほとんど沖縄に近い場所。文化も琉球文化の影響が強い島。原色の絵の具を塗り広げたような海と空がどこまでも広がるあの光景を見たとき、人間の小ささと、人間の作る物質的な力の強大さの両方を思い知らされます。沖永良部に行きたいと言った祖母は何かが変わると思い、あの光景を見せたかったのでしょうね。あの美しい風景、いつまでも変わらずにいてほしいと願うのは、離れた地に住む者のエゴなのでしょうか。
沖永良部島が舞台ということで世間の荒波に揉まれた傷ついたガラスような主人公の「僕」。でも「僕」は祖母と沖永良部島との関わりで、シーグラスのように様々な色でキラキラと柔らかい光を放っているように思えました。