第三章 快楽

水無月 ルキア Ⅰ


 人間は、水だけでも一ヶ月は生きられる。

 本かテレビか、はたまた誰かが言っていた。


 でも、私は水だけでは生きていけない。

 何故か? それは、あまりに退屈すぎるからだ。

 

 私は退屈な時間が、この世で最も辛い苦しみだと思っている。

 だから、一ヶ月の退屈で私は死んでしまうだろう。

 死因・退屈死…………何とも、間抜けな死。

 そんな死に方だけは、絶対にお断りだ。


 人生を生きるには、何かしらの〝快楽〟が必要だ。

 人間は、生きている内に様々な方法で〝快楽〟を得ようとする。


 美味しい物を食べる事。

 ただ家で、ゴロゴロする事。

 お金を無心に溜める事。

 女を買う事。

 …………人によって〝快楽〟は、様々だ。

 そう。だから、私は異常ではない。

 たまたま、私が求めた〝快楽〟が。


 ――――――――人を殺す、という事だっただけだ。

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