人類は戦争が趣味な模様

@miini

第1話

 銃声が響いている。


 そして私の人生は終わろうとしている。




 

十年ほど前まではこの世界はある程度平和な状態にあった。


 しかし21世紀後半の現在、地球は WWⅢ(第三次世界大戦)の真っ只中にある。


 

 全世界の大半の国が合併して作られた連合国軍。


 これと対立しているのは、膨大な量の核兵器を保有している国である「コアノリス帝国」や、テロ組織の「ケイ」が結託して作った理想主義同盟だ。


 

 戦争のきっかけは、侵略戦争やテロがエスカレートしてきた理想主義同盟に連合国軍が軍事的制裁を行ったこと。


 それをきっかけに始まった戦争は予想以上の理想主義同盟の反撃に苦戦、泥沼化し、現在世界中を巻き込んでいる。



 毎日のように世界のどこかで核兵器が行使され、地球のどこへ行っても銃声を聞かない日はない。

 新たな兵器や薬も開発された。


 1日10万単位で人が死に、既に人類の総数は1億人を切っている。


 それでも、人は戦争をやめない。敵を滅ぼすまで、戦い続けるのだ。




 私は人を殺したくない。今日まで一人も人を殺さずに生きてきた。


 今日、角を曲がった時に出くわしたあの兵士。


 撃たれるのは分かった。


 それでも、私は彼に銃を向けられなかった。


 彼に銃を向けられ、私はまもなく人生の最期を迎える。



 銃声が鳴り、ひどくゆっくりとした速度で銃弾が飛んでくる。


 目では見えているのに、頭では認識しているのに、体は動かない。


 頭に何かが入り込んでくる感触。

私はもう助からないだろう。


 散々な人生だった。

 こんな終わり方したくなかったのに。


 そして私の意識は途切れた。



 十年前、私はとても幸せだった。




 むかしむかし うちゅうがうまれるずっとまえに ひとりのかみさまがいました


 じん というなまえの かみさまです


 かれは あるとき こどくから

ひとつのせかいを つくりました


かれは いきものがすめるばしょ ちきゅうをつくりました


 こうして いま このせかいがあるのです




 「もういっかいよんでー!」


 「だめよ、サラ。こんな時間。今日はもう寝なさい」


 「えー」


 少女はそう言いながらも目を閉じる。


 この世界では、半年前から世界規模の戦争が続いている。


 だが、それでも民たちは平和に暮らしていた。


 戦争は戦地でのみ行われており、

民たちは戦争が起こっている自覚はなかった。


 その時。


 強い光が窓の隙間から指した。


 あたりは昼のように明るくなり、直後に衝撃そして轟音が襲う。




 「あ、あれは......」




 窓から見えた、大きな炎。

 あの場所は......


 


 「サラ、家で待ってなさい。絶対に外に出てはダメ。わかった?」


 「う、うん」




 慌てて家を飛び出す母を見送る。


 炎の上がっていた場所。


 そこが父の仕事場の近くだと、サラは知っている。


 そして......


 父も母も、二度と帰ってくることはなかった。


 

不意に意識が戻る。

あれは夢だったのか?

それともここは天国か。



 遠くに声が聞こえる。

どこからだろう。

何も見えない。


 その声はだんだんと近づいてくる。


 ふと、私の目に光が戻る。


 そこに見えたのは1人の男性。




 「お前、めずらしいやつだな」


 「え?」



 いきなり話しかけられて驚く。


 この人は誰だろう。


 私と同じように死んだ人だろうか。



 「こんなご時世に人を殺せないなんて、変なやつ」


 「かも知れないね……」


 「でも、俺は好きだぜそういうやつ」



 恥ずかしげもなく言う彼。


 いきなりそんなこと言われるとこっちが困るというものだ。


 彼は続けて話す。




 「お前、この世界を変えられるかもしれないな」


 「私が、世界を変える?」


 「そう。お前は、人同士が殺し合うこの世界を変えられる」


 「でも私はもう死んだの」


 「は?勝手に死ぬなよ」


 「え?私、死んでないの?」


 「死んでねーよ。まあ、重症だが。それでも俺にとっちゃ治せない傷じゃない。元の世界に戻れ。そして世界を変えてくれ」

 「あ、あなたは?」


 「俺は、じん だ」





 まぶたを開く。


 そこは私が死んだはずの場所。


 さっきのはいったい何だったのだろう。


 頭の傷はない。


 ふと前方を見ると、そこにはなぜか震えている1人の男。


 「い、生きてる………こいつ、バケモノだ!」




 男は逃げて行った。

やっぱり私は銃で撃たれたらしい。


 ということは、さっきのは……


 一人納得し、自称神様と同名の彼との会話を思い出す。


 そうだ、世界を変えるんだ。


 私は、この世界を救うのだ。

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