第31話 その馬鹿げた魔法で取り返すことが出来たのかね?
Night Side
「ど、どういうことですか!?」
目を大きく見開いてヴェロニカが聞いてきた。
「つまりその……私の跡継ぎになって欲しくて……」
「跡継ぎって……!? それって変です! だって私の方が年上なのに!!」
ルドビコも頷いている。
「うん、それについて少し話すね」
私は語り出す。この街について知っている事と私が想う事を。
この街の状態は変化した。空気と土と水、そして人々。それぞれの変化に伴い精霊たちも変わっていった。私の力の比率が大きかった精霊たちの力とブローグ・ヒャータ。それが土地から作り出すものだけで相当な力を持つようになった。精霊たちも時には対価無しで働いてくれる。正確には違うのだろう。この土地で人々が生活すること、それこそが精霊たちへの対価となっている。だから時々願いを聞いてくれる。
こうなると、この力を私が独占するような状況はみんなにとって害だ、と考えた。この力の可能性はまさに無限大。良い事にも悪い事にも働いてしまう。だからこそ独占すべきじゃないと思った。少し長く続いた鋼鉄派との争いでみんな自分たちの力がどんなものか、どんな脅威を呼んでしまうか、便利な点と危険な点、少しだけどわかってくれたように思う。だから、ヴェロニカに新しくみんなを導く存在となって欲しい。
私はルドビコと一緒に自分たちの課題を探っていく。時々、会いに来るからそれでお願い出来ないだろうか……
と、話したところで――
「何ですかそれ!? まさか、どこか遠くへ行ってしまうんじゃ!!?」
「いや、そういうわけじゃないけどね」
私は続けた。
色々なものを漁って自分なりに得た結論だけど、歴史上の幾らかの人々は私と似た力を得て来たんだと思う。それで、彼らの残した遺産によれば、その力を得たなら後は何をするのもお前の自由。世界を滅ぼすのも、自らの帝国とするのも、人々を幸福にする道を往くもよし、ただし、自分の道を誰かに託したいなら後継者は自分で決めろ。そして、ある程度まで育てろ、という話かな。
きっとそのうち、私が何もしなくてもみんなこの力を学び始めるよ。あまりにもとんでもない暴走が起こりそうな場合、ちょっと注意してくれる人が必要だと思うんだ。それをヴェロニカにお願いしたくて。
と、話したところで……
「だからって私に全部託すって……!? だって、そんなこと出来るわけないじゃないですか!? オーナーがやってきたことがどれだけすごいか、みんなまだ知らないだけですよ!?」
「うん、まあ、でも、やろうと思えば誰にでも……」
「そんな馬鹿な!? だって……今、この街のみんなが使ってる日用品もインフラの整備も、ほとんどの基礎をあなたが作ったようなもんですよ!? 普通に考えたってニュートンやアインシュタインやエジソンやダヴィンチやジョブズくらいの仕事してますって! ど、どうやって私に後を継げと……」
「うん、そのあたりもやり方を、というかコツを教えるからさ……」
そのまま話し続けていた。彼女も少しずつ落ち着いて聞いてくれるようになり、どうにか話はまとまった。強引なのはわかってる。でも、これも必要なはずだ。
私はルドビコと二人になって話す。
「驚いた?」
「……うん」
「ごめんね」
「……ううん」
「でも、これでもし私がちょっと自由になったら、あなたと一緒に必要なものを探りに行く。この街の中も外も、世界中どこへでも行くから」
「……うん」
そのまま二人で黙っていると、ルドビコが口を開いた。
「ねえ」
「何?」
「私も、その、修行を……見ていても良い?」
「……うん。いいよ」
「ありがとう」
そうだね。私に至らない所があったら指導してもらわないとね。
その後、家に戻ってブラックバードと語り合っていた。
「と、言うことにした」
「ふぅん」
「どう思う?」
「すごくいいと思う」
「そう。良かった」
その後、私はブラックバードにヴェロニカと進めるプランを披露した。彼女は眼を輝かせて聞いてくれた。時々ちょっと違うんじゃないか、とか言ってくれたり、魅力的な提案もしてくれた。
「それで、もう一つお店を創る話はどうなったの?」
「うん。それなんだけどね――」
それについてのプランも話した。そのまま朝が来ちゃうんじゃないかと思うくらい話し込んでいた。
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