第30話 あの偶然が無ければ、俺たちは出会っていなかった
Mary Jane Side
Fly_TV
お前が欲しがってる力ってのは何なんだ?
Mary_Jane
俺が正直に答えたとして、お前はどうするつもりなんだ?
Fly_TV
私がその手助けをすれば、有無を言わさずこの街に乗り込めるわけだろ? だったら協力してもいいかなって思ったわけさ。
Mary_Jane
まあ、いいかもしれんな。ところで、お前はこの街の状況を知っているか? 毒喰派の力についても。
Fly_TV
全体をさらっと眺めるくらいだな。科学と魔術が融合したミスロ・パンクな状況ってところか?
Mary_Jane
その通りだ。俺はそのうちの重要な力を欲している。精霊を呼び出す力と、ブローグ・ヒャータを生成する力だ。
Fly_TV
なるほどね。それじゃ手が出せない。で、お前の企みの進行具合はどんな感じなんだよ? ヒントくらいは貰えたのか?
Mary_Jane
ブローグ・ヒャータの生成方法は99%解っている。残りの1%が重要だ。それが精霊を呼び出す力と関連している。
Fly_TV
へえ、やるじゃないか。まあ、陰ながら応援しているよ。じゃあな。
実際のところ俺は殆ど動いていなかった。いつも探りは入れていたが、見つけることができなかった。ディープ・スパイダーに依存しながらも組織に探りを入れていき、彼らが未完成ながらもブローグ・ヒャータを作り出せることを見つけ出した。俺はそれを盗み、密かに研究していた。だが、目的に至るまでの解は得られなかった。ここに来て鋼鉄派の技術が混ざり様々なヒントがもたらされた。さらに奇妙なことだが毒喰派の土地に変化の兆しが見える。今までわからなかったものが何故かわかるようになった。材料となる自然の素材が俺に語り掛けているようにすら感じる。そして、もうすぐ最後のピースがはまる。そうすれば、俺の目的は達せられるだろう。
だが、妙なのは渡良瀬の動きだ。あいつなら、当然俺と同じだけの研究成果を得られている筈だ。それを使えば鋼鉄派と組んでさらなる開発を進めることが出来る。しかし、ディープ・スパイダーから働きかける様子がない。ここに来て仏心に目覚めたか……もしくは、未だに執着しているか、だな。あの「エア・ブレス・メタル」に。
Night Side
店の外で私はルドビコの背中をさすっていた。私の知らない、彼女の辛い部分。それが動いてしまった。私たちはお互いに触れられない。それぞれの大事なものの為に。
「あ、あの大丈夫ですか?」
「え、ええ。大丈夫。ごめんなさい」
ヴェロニカが追いかけてきてくれた。私たちは三人で空を仰ぐ。
「ねえ、この街の……特に毒喰派の領域、とりわけヘイヴンの辺りだけど、変わったと思わない?」
「さあ、特には……今までの小競り合いがさらに小さくなって落ち着いたとは思いますけど……」
「それもそうなんだけど、精霊たちと、土地のこと」
「土地? この辺りの?」
「そう」
「うーん……まあ、お客さんが増えましたかね。周りの店も繁盛しているようだし」
「うん。おかげでハドソンにきつく言われずに済んでる。ありがとう」
「いや、そんな……そりゃ、仕事ですから……」
ヴェロニカが照れてる。私もつられて微笑む。ルドビコも。場が和んだよ。では、切り出そう。
「あのね、私の頼みを聞いて欲しいの」
「!? なんですか、改まって。大丈夫です。"G.O."の外へ出店しろって言われてもやり遂げて見せます!!」
「そう、ありがとう。実は私の代わりにアイアン・インゲルの取締役になって欲しいんだ」
「「ぶっ!」」
二人が妙な声を上げた。まあ、そうだろうね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます