Verse 2. Strike Back to the Economic Empire

第27話 俺の他にも潜入をこころみた奴がいる

Salt Side

 フーリッシュ・ハートの死亡は世界に伝えられた。表立って慌ただしくはならなかった。だが、水面下で蠢く者たちがいた。その結果、さらなる試練が"G.O."にもたらされようとしている。俺の役目は何なのか戸惑うところだが、このまま共闘関係を維持することにした。

 俺が今目にしている画面。その中にはこの街をどうにかしたい勢力の先兵が集まっている。悪く言えば『捨て石』だろうな。どうも全員にその自覚があるようだ。俺が自らの立場を明らかにして呼びかけたところに集まったわけだからな。


Salt_BTI:

 さて、俺は受け身だ。お前たちの要求を聞き、受け入れられることは努力してみる。無茶な要求は突っぱねる。それが今の立場だ。それで、お前たちは何がしたいんだ?


Wolf_DH:

 俺は突撃兵だ。雇い主の意向に従うのみさ。だから目的はこの街の破壊。お前と交渉する意味はない。


Salt_BTI:

 じゃあ、何で今ここに居るんだ?


Wolf_DH:

 俺の雇い主は慎重でね。自分が動かなくて済むならそれで済ましたいようだ。だから俺はしばらく見物させてもらう。情報を伝えて、その後の判断を仰ぐ。それが今の俺の立場さ。


Fly_TV:

 要するに傷つかずに利益を得たいってわけだろう? そんな連中ばかりだ。お前もその力にすがってるってことは卑怯だと罵られても文句は言えないぞ?


Wolf_DH:

 実際その通りだが、俺個人の目的はちょっと別にあってな。だが、これはここで言う義理は無い。


Fly_TV:

 へえ。まあいいか。なら、そっちのSaltに言わせてもらおう。私の目的もこのWolfと同じさ。ただ、私は容赦なく暴れたいってだけだよ。こうなると利益が合致するから文句は言わないだろうな。だからすぐにでも攻撃を始めたかった。だが、それについて邪魔が入ったのさ。私の雇い主に横やりを入れた奴がいる。だから私はここに居るんだ。


Salt_BTI:

 で、その横やりを入れたのが?


Mary_Jane:

 そう、俺だ。


Salt_BTI:

 お前の目的は?


Mary_Jane:

 俺はフーリッシュ・ハートの目的を継がせてもらう。一つだけだがな。その為にはこの街の力が必要だ。俺がその力を得るまでこの街を破壊されるのは困る。そう言う事だ。


Wolf_DH:

 あんた、フーリッシュ・ハートの知り合いか? もしかして、あいつがさらった子どもたちの一人とか? それともその関係者か?


Mary_Jane:

 それをここで言う義理は無い、と言ったところか。


Wolf_DH:

 ははは。まあそりゃそうだ。それにしても何だよその、メリージェーンってのは? スパイダーマンの彼女か? ディープ・スパイダーに潜り込んでいるのを表しているつもりか? ああ、これもか。まあいい。それで、当面お前がやることは?


Mary_Jane:

 そっちのSaltの商売敵になるだろうな。つまり、この街で得た力の一部をお前たちに流す。それを流している間は、この街への攻撃を止めてもらう。


Fly_TV:

 つまり、情報を流し、街を守る側で睨めっこ。さらに攻撃したい側でも睨めっこ。それぞれが自分たちを守りつつ、隙あらば他の全てを排除したい。だからすべてに睨みを聞かせる。約束なんてありはしない。利益に関してのみ動く。そして出来上がったのが膠着状態ってわけ? 気に入らないな。


Salt_BTI:

 何にしてもこの状態はもうすぐ崩れるだろう。何かが動いているのを感じる。


Fly_TV:

 何かってなんだよ?


Salt_BTI:

 わからないから何かと言ってる。だが、俺にはこの感覚が何度もあった。もうすぐ何かが起こる。もうすぐというのが数日後なのか数年後なのかはわからないが。だからこの街に群がる者たちがどんなものなのかを知りたくなって呼びかけた。俺がこの場を用意した理由はそれだけだ。この通信ラインは開けておく。好きに使ってくれ。当然、全てモニターしているがな。


Wolf_DH:

 それもいいだろう。それに、今俺たち以外にもこれを見ている奴がいるんだろう? 奴等かもしれないが。そいつらに状況を知らせるのもいいかもな。酷い状態に陥るのを黙って見ているのも辛いものだ。存分に味わわせてやろう。今日はここで終わる。じゃあな。


Fly_TV:

 私もだ。


Mary_Jane:

 出来過ぎている、そう感じないか?


 そうやって全員が去った。

 感じるさ。何故こうも上手く行かず。何故俺たちは無事なのか。とにかく俺に出来ることを続けなければ。この街の他に俺の生きる目的は、最早無い。

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