第14話 英雄や狂人を、長年興味の対象としてきた
Day Side
俺は隊列の後方に居た。列の中ほどにある装甲車の近くに何かがいる、という気がした。本当にそれくらいだった。次の瞬間、その装甲車は爆発した。爆風と轟音に襲われ、俺は後ずさる。
「何だ!? 何が起こった!?」
通信が混乱している。だが、それもわずかな時間。すぐに状況を把握し、行動を起こしている。俺にも事態が知らされた。
<ひ……人です。 刀です。 刀で装甲車が斬られました>
「刀? そんなもので装甲車が破壊できるのか……」
俺は少し動揺したが踏ん張った。銃声が多数。部隊をまとめなくては。
「敵は!? 何人だ!? 他にどんな奴らが居る!?」
<ひ、一人です! でも、弾が……弾があたらな――>
「おい! どうした!?」
通信が切れた。戦闘地点へ俺が動こうとした時だ。肩を掴まれ止められた。レナードだった。
「鬼卿だ」
「っ!」
何でこんなところで……いや、何処に出てきてもおかしくない。これは好機だ。奴を倒せる。レナードが続けて言う。
「俺たちが対応する。お前は少し離れて全体を観ていろ。それも仕事だろう?」
「ああ、そうだ」
俺は言うとおりにする。レナードの部隊の一人が俺の護衛に付き、少し離れたところにある建物の屋上に俺たちは潜んだ。
俺の目に映った。鬼卿の姿。あれが、あの織山実有か……
そこで行われているのは人間業とは思えなかった。ジャンプすると3メートルほど跳びあがる。斬撃で機動部隊のシールドが破壊される。自動小銃の弾を避け、刀で弾く。刀での技のみではない、拳や脚で俺たちの部隊は圧倒されている。
「なんだ、あれは……あれが人間か!?」
<人間だな。それも生身だ。俺たちが苦労して手に入れた力を明らかに上回っている>
レナードから通信。あいつも見ているようだ。
「こんな奴を相手にしていたのか……どうすれば……」
<一つ、考えがある>
「何だ?」
<今回の装備の幾つかに(NE)と書かれたものがあるだろう>
「ああ、あったな。俺は強力な新兵器としか聞いてないが」
<それを使おう。数が限られているから作戦が必要だ>
「どんなものが要る?」
<このエリアは地下道が多い。今は使われていないものも相当ある。マップに詳細があるはずだ。>
「ああ、あるな」
<その何処かに鬼卿をおびき寄せよう。トラップや伏兵で徐々にダメージを与える。俺たちが持ちこたえる間にその配置を決めてくれ>
「わかった!」
俺はポイントを指定し、装備と部隊の配置を決めた。部隊を動かしつつ指示を伝える。後はどうやって鬼卿をおびき寄せるかだ。徐々に後退しながら地下に潜れば追ってくるかもしれない。俺は部隊を集めて移動を始めた。
(……?)
目の前の様子がおかしい? 何かが、動いたような……?
俺は部下に命じて気になったあたりを調べさせた。
部下がその辺りに手を伸ばすと……
「……? なんだ……?」
何かがあるような反応を示す。さらに探ろうとしている。
俺に何かが閃いた。それはダメだ。すぐに離れろ。
「待――」
声を上げた時には部下の体が大ぶりの剣で貫かれていた。透明のヴェールが剥がれ、見覚えのある姿が現れた。
「デュラハンだ! 撃て!」
部下が一斉に射撃を始める。俺も撃った。レナードの部下が俺を庇いながら射撃。徐々に俺を遠ざけていく。
姿を現したデュラハンは馬車を駆りながら剣を振るう。部下がなぎ倒され、斬られる。
「くそっ!」
俺は離れながら指示を伝える。
「いいか。奴は馬とチャリオットも含めて一体だ。それぞれのダメージは全体のダメージだ。動き回って少しずつ狙いやすいところを攻撃しろ」
部下たちは動き回りながら銃撃。止まったところをナイフで斬りつけ、離れる。それを繰り返す。だが、デュラハンは怯まない。部下は斬りあげられると空中に放りながられるように吹き飛ばされる。部下が怯えているのがわかる。なんとかしないと。
俺は銃撃を止めタイミングを待った。部下たちが銃撃し、デュラハンが攻撃のため馬を止めた。そして剣を振る。ここだ!
俺は陰から飛び出し、デュラハンに体当たり。そのまましがみつく。胴に右手を回し、左手で殴る。電撃、熱、針、使えるものは何でも使って殴り続ける。そしてデュラハンが倒れ、馬車から落ちた。俺は馬乗りになって殴り続ける。部下もナイフで刺す。そして動きが止まった。
倒れたデュラハンが塵のようなものへ変わっていく。そして風に吹かれて消えていった。後ろの馬とチャリオットも同じように消えていく。
俺はみんなに呼びかける。
「大丈夫か?」
すぐに返事が返ってきた。重傷者は退かせる。動ける者たちの状態を確認し、作戦を継続させるため配置を考えていた。だが――
「え?」
さっきまでチャリオットがあった場所に何かが居た。
「子ども?」
俺はその子に近付いた。まさか、さっきの銃撃で……
「あ……」
その子は動いて俺を見た。
「無事だったのか!」
一気に力が抜けた。俺はその子へ近づき体をあらためた。
「大丈夫か? 何であんなのに乗ってた!? どこか弾がかすったりしてないか?」
「あの……」
「とにかく、ここを離れよう。ここは危険だ。何時あいつが襲ってくるかわからない。歩けるか?」
その子は俺をじっと見ていた。吸い込まれそうな黒い瞳。俺もその目を覗き込んでしまう。一体この子は……?
「い、行く。歩ける」
「そうか! 行こう」
俺はその子を連れて歩き出した。部下たちは鬼卿を仕留めるための配置についている。待ち伏せのポイントはこの先だ。
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