近くて遠い場所
凛
近くて遠い場所
幼い頃からずっと、憧れていた場所がある。
それは、福井県民である我々から見て隣県――いや、隣府と表現した方が本当は正しいのだろう――に当たる、京都府だ。
福井県と京都府が隣? え、そうなの?
そう思われる方が大半かもしれない。だが、これは紛れもない事実である。一度日本地図を検索してみて頂ければ一目瞭然のはずだ。
特に私の出身は、福井県の京都府寄りの方(俗に言う
ちなみによく誤解されるのだが、実は我々自身も、使っている方言は福井弁ではなく京都寄りの関西弁だったりする。京都テレビも映るし……古い町並みなどは、『小京都』なんて言っていただくこともあるくらいだ。
それでも、私は京都を身近な存在だとはあまり思っていない。
行ったことがないわけではもちろんないのだけれど、それでも身近な存在とするには、あまりに敷居が高い……というか、それ自体おこがましい気さえしている。
何でかって?
まぁ何となくなのだが、イメージ的に京都というと高貴な気がする。おしとやかで、マナーに厳しくて……云々。私のような田舎育ちには到底適わないほどの、きらっきらしたオーラがある(※個人の感想です)
数年前に一度、用事があって京都市内へ行く機会があった。
その時に、少しお恥ずかしい話ではあるのだが、方向音痴の気がある私は道に迷ってしまったのである。
そんな時に声を掛けてくれたのが、お巡りのおっちゃん。私に向かって気さくに「お嬢ちゃん、道迷うたんか?」なんて聞いてくれて、私が行きたい場所を言うと「あの道をまっすぐ下って~」と丁寧に教えてくれた。
まず「道を下って」なんてご丁寧な表現に、田舎者は脱帽である。
京都市内は〇〇通りという通りが何本も縦横に並んでいて、いわゆる碁盤の目状になっている。なので分かりやすく、そこから北へ向かうことを『上る』、南に向かうことを『下る』と言うのだそうだ。ちなみに住所にも『○○通り○○
そして何より……何より! 「お嬢ちゃん」って!!
あのイントネーションでお嬢ちゃんなんて言われたら、もう誰が相手だって色っぽく思えてくる。あのお巡りのおっちゃんだって、結構歳食ってたけど(失礼)危うく惚れそうになったもの。日常会話の何気ないところにまで色気を出してくる、ホント京都すごい。私が男なら是非とも真似したい。というか弟子入りしたい。あの色気、どうしたら出せるのだろう。
語彙ないから(お前物書きだろ)、もうすごいとしか言えない。
本当に、京都かっこよすぎます(※個人の感想です)
今年の七月に、友人と京都旅行へ行ってきた。
太秦の映画村で、ちょっとした貸衣装である着物を着て、時代劇の撮影で使うようなセットの中をぶらぶらと歩く。一度でいいからやってみたかった、夢が少し叶った。
お金で夢を叶えられる、社会人は偉大である(何の話だ)
この時は他に忍者屋敷に行ったり、四条河原の辺りでショッピングを楽しんだりした。余談だが、四条河原という街も『四条通り』と『川原町通り』の境目の辺りだからそんな名前なわけだ。ただ、場所によって『四条河原』だったり『河原町四条』だったりするのは何故なのだろう。私は京都府民じゃないので分からない。やはり、近いけれど遠い街だ。
お土産に買って帰ってきたのは、ツイッターのフォロワーさんにオススメして頂いた『天の川』。半分があんこでもう半分がキラキラした青色のグラデーションが美しいゼリーで出来ている、羊羹だ。
私はあんこが苦手なのだが、フォロワーさんに「和菓子は目で楽しむものでもある」といったような話をして頂いたので、よし、じゃあ買ってみようと思ったわけである。実物もやはり美しく……もちろんちゃんと全部食べた。半泣きになりながら。
次は是非とも清水寺などの古都巡りや、祇園の街へ繰り出すなんてこともしてみたい。憧れの夢は尽きない。
……と、ここまでただただ京都に対する憧れしか綴っていないのだが、文字数もそろそろ危ういのでこの辺で締めたいと思う。
そこまで京都好きなら住めば? なんて言われるかもしれないが、そうするためにはまず住まいを探す前に京都で仕事を探さなければならない。なかなかハードルが高い。
そして……ここまで書いといてこのようなことを言うのも何なのだが、私はなんだかんだ故郷である福井の地が好きなのだ。
憧れであるというこの京都への思いは、これからも私の心の中に、キラキラとした思い出とともにそっと閉まっておくことにしよう。
最後に……京都府民の皆様に一つ、謝罪をしておかなければいけないことがある。
高校時代、授業で習った『朱雀大路』のことをなんか……平等院鳳凰堂的な感じの建物だと思っていました。道だったんですねアレ。
本当に、申し訳ありませんでした。
近くて遠い場所 凛 @shion1327
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