紹介文に、作者様の「体験談」とありますが、作品の前半部分に関しては、私にも似たような経験があります。己の限界を悟った時、目に見える世界は急速に色褪せ、身の置き所がなくなったように感じる…。何かを楽しもうという気持ちも起こらず、誰かに相談したいという気持ちにもなれない…。
そんな心持ちで外に飛び出した主人公は、偶然向かったとある寺で、大切な何かを実感し、見えなくなっていたものを取り戻していきます。その過程の心理描写が、とてもリアルです。
ラスト、不思議な体験をした主人公の言葉には、作者様の敬虔なお人柄が滲み出ているようで、大変心に沁みました。