第8話 終結と変化
彼女は言った。私のせいであなたが死んだ。だから償うためにループを起こした。その代償に私はもうここから出られない。現実ではもう死んでしまっている。私はループの中で生き続けた。でも、消えるのは怖かった。このまま、ループを繰り返したら消えずに済む。でも、それではあなたを巻き込んだ意味がない。あなたを現実に戻すには私が消えるしかない。と。
「君とのループはなんだかんだで良い経験になったよ。そこまでいやじゃなかった。」
「嘘つき、途中で投げ出したくせに。」
「確かにな。でも、ループの中で君との会話、行動は本当に楽しかった。」
「ありがとう、私も楽しかった。」
「このまま、ループを繰り返してもいい。君とずっとこうしていたい。だから、俺は行動を起こすのを諦めなかったんだ。」
「それは、出来ないよ。私はもう死んでしまっているけど、あなたはまだ生きている。ループを解いて現実に戻って、生きて。」
「他に何か方法があるはずだ、探し出そう。」
「ないの。」
「あるって。」
「本当にないの。」
「そんなこと言うなよ。」
「もう、いいの。」
俺は、勢いに負け、息を飲んだ。
「私の努力を無駄にしないで。」
「いや、でも、君は繰り返したじゃないか。それは、やっぱり…。」
「それ以上は言わないで。」
「…。」
「私は、あなたに私のこと全てを知ってもらえた。それだけであなたの中に私は生き続けられる。それでいいの。だから、忘れないでね。時々思い出してほしいな。」
「わかった。忘れない。」
「それじゃあね。バイバイ。」
目の前が白くなる。意識が遠のいていく。まるで眠気がきた感覚だ。
「これでいいのだろうか。なあ、藤川。」
「驚いたよ、君が僕の名前を呼ぶとは。」
「いや、なんかねぇ。違和感しかなかったんだわ。そもそも、藤川なんて知り合いいないし、ループするたび、引っかかっていたんだ。」
「そうか、それはどうも。」
「単刀直入に言う、俺にもループさせてくれ。」
「ははは。冗談きついなぁ。僕は神じゃないんだ。」
「こっちのセリフだ。できるんだろ?こうして俺の前に現れているんだから。」
「君はわかっているんだろ、この辛さを。それでもするのかい?」
「あぁ、やるよ。これは俺のための行動だ。」
「なら、願え、さらば与えよう。」
「ありがとう、神様。俺は……」
日差しが強い。これで秋が来ると言われているから怖いよね。今年の夏は祭りも海も楽しんでいい思い出が出来た。今後の大学生活も充実させたいものだね。友達と大学の坂道を下って下の横断歩道まで歩いてた。話に夢中になっていて不注意になっていた。信号は青、だから渡ろう。それで、一歩踏み出したとき、車が走って来ているのがわかった。すぐに場面がスローモーションになる。このままじゃ引かれる。体が止まらない。どうしよう、助けて、誰か、まだ死にたくない。そう思ったら、顔に衝撃が走った。目の前には緑が広がっている。何かにぶつかったみたい。驚いた、さっき、車に引かれそうになったはずなのに、なんで?そう思っていると、ぶつかったのは人だと気づいた。
「…あっ、あの、すみません、ぶつかってしまい。」
「あぁ、大丈夫、いや、でもよかったね、あのままだと車に引かれてたかもね。」
「えっ!?うそ、なんで…?」
「ん?なにが?」
考えすぎだろうか、彼がわたしの頭の中を読めるはずないし、でも、なんだか、見通されてる感もあるし。なんなんだろう、この不思議な感覚。
「じゃあ、これで。気をつけなよ。」
「あっ、はい。」
そう言って彼は去って行った。
「ねぇ、あれ誰?知り合い?」
「さぁ、わからない。でも、なんだか不思議な気持ち。初めてあったのに心がとても温かくなった。」
「なにそれ、恋?」
「えー、わからない。」
「えっ、ちょっと、なに泣いてんの?そんなに怖かった?」
「あれ?わたし泣いてるの?」
頬を伝わる涙は、流すたびにわたしに何かを忘れさせるような感じがしたが、それとともになんだか懐かしいものと、優しさを伝えてくれた。
ループ・ヘルプ メルケン @mk0908
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