第12話 ラブレター

是俊君へ



 別れてからまだ一日も経ってないのに、何だか不思議な気がします。

 パリには、夕方着きました。

 記憶にある通り、ここは綺麗な街です。

 飛行機の中で、君のことを考えていました。

 僕にとって、是俊君は、恋人であるとともに一番の理解者です。

 日本にいる時に、もっと伝えておけばよかった。

 僕は、是俊君が好きです。

 毎日顔を合わせていたのに、あと365日も会えないのかと思うと

 信じられない気がします。

 寂しいとは、まだ思いません。

 ただ、遠く離れているということが信じられないだけです。

 明日はオーナーのジルベールにパリを案内してもらいます。

 たくさん勉強して帰ります。

 また、メールします。

 忙しい時期だと思うけど、体に気をつけて。



 如



*****




  無事に着いたみたいでよかった。

 会社でメール読んでる。

 秘書課の連中が、お前が残していったメモが役に立つって喜んでた。

 お前の手書きの、取引先の役員の好みとか性格とかまとめてあったやつ。

 あと、似顔絵も微妙に似てるって笑ってた。よかったな。

 必要な物とか欲しい物とかあればいつでも言えよ。

 今、時間がない。

 今夜またメールする。

  


*****


  さっき帰ってきた。

  会社にも家にもお前がいないのが、変な感じがする。

  俺にも、まだ実感がわかない。

  あと365日会えないのか。長いな。

  今死ぬほど忙しい時期でよかったと思う。残業も増えるし、新卒の面接も

  もうすぐ始まる。

  時間見つけて、勝手に部屋探しとくぞ。

  預かってる荷物も全部、勝手に運んどく。心配するな。


  何書けばいいんだろうな。メール自体、お前とはほとんどしなかったし。

  元気なら、それでいいか。

  頑張れよ。

  信じてる。

  

  愛してる。 



〈完〉

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

消せない思い -バタフライ・モノクローム2- 西條寺 サイ @SaibySai

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ