耽美的で叙情的な世界観、それでいて何が起きているのかきっちり表現されている過不足のない地の文。
「絵」という難しい題材を文章で描ききる高い描写力に加え、登場人物の心理を都度高い品質で伝える語彙力は、なかなかネット小説では出会えません。
物語そのものも、配されたカードを巧みに使い切る形で最後まで描かれていました。
ミステリとしては謎がやや弱いですが、相当に推敲を重ね、練り込まれたプロットで書かれた作品であろうと推測されます。
神の視点になってしまっているところが少しだけ見受けられ、それが直ればなお完成度が上がるでしょう。
女性向けとタグづけされていますが、男性が読んだとして、少なくとも損することはありません。
10万文字と決して短くない作品ですが、自信を持ってお薦めします。
これが埋もれ続けるのは許せない!