最終話「なつのおわり」
その夏は、わたしとにしむらさんとブロンドおねえさんの三人で、川でバーベキューをしに行ったり、山登りに行ったり、庭で線香花火をしたりした。ブロンドおねえさんのビキニも見たし、にしむらさんの下着姿もたくさん見られた。どこに行くにもわたしたちは三人一緒だった。
そして八月の終わりに私は死んだ。十歳だった。お葬式はやらなかったけれど、にしむらさんとブロンドおねえさんはたくさんたくさん泣いてくれた。三人で過ごしたその部屋は、三人のにおいでいっぱいだったのに。私はその部屋で死んだ。お医者さんは、寿命です、と言った。
にしむらさんとブロンドおねえさんは、庭に咲いてる一本のひまわりの前に私を埋めてくれた。土を掘り返したとき、にしむらさんのタバコの空箱が一つでてきたので、二人はまた泣き出してしまった。
わたしの亡骸は、お気に入りのおもちゃ、首輪、ドッグフード、タバコの空箱、そして線香花火と一緒に埋められた。三人で過ごした夏のにおいと一緒に、ながいながい眠りについた。
翌年の夏に咲いたひまわりからは、タバコと線香花火のにおいがした。
なつのにおい はかせ @hakase417
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