008 浅間の獄 【東有】
昔、京都がすみにくかったのだろうか、ある男が東の方に住むところを求めて行った。共の者も、わずかに一人二人ばかりつれていった。信濃国の浅間山に煙が立つのを見て、
信濃の国の浅間山に立つ煙がいやでも人目に付くように、自分たちもあちこちの人に怪しい奴だと見とがめられることはなかろうか。
【定家本】
むかしをとこ有けり。京やすみうかりけん、あづまのかたにゆきてすみ所もとむ
とて、ともとする人、ひとりふたりしてゆきけり。しなのの国、あさまのたけに、けぶりのたつをみて、
しなのなる あさまのたけに たつけぶり おちこち人の みやはとがめぬ
【朱雀院塗籠本】
むかし男ありけり。そのおとこ。身はようなきものに思ひなして。京にはをらじ。あづまのかたにすむべき所もとめにとてゆきけり。しなののくにあさまのたけに。けぶりたつを見て。
しなのなる 淺間のたけに 立煙 をちかた人の 見やはとかめぬ
【真名本】
昔、男ありけり。京や
信濃なる 浅馬の
【解説】
業平が東下りする途中に信濃の浅間山まで行ったのだと苦しい解釈をする人がいるようだが、紀有常ならば、信濃国にも権守として赴任しているので、まったく矛盾しないのである。
紀有常が京都に住みにくい理由は、彼が良房、基経ら、摂家に圧迫されていたからである。妻も藤原氏であり、出世しているうちはよかったが、左遷されると妻は逃げて尼になってしまった。
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