第2話解ける警戒心

なんで私は生まれたの。なんでこんな運命なの。私の名前は・・・名前?あ、名前なんてないや。私の名前なんて知らない。何も知らない。ましてや「愛」だなんて・・・

 「おぎゃーおぎゃー」新しい命が誕生した瞬間であった。「わ!3175グラムの元気な女の子です!」助産師が満面の笑みで言った。母親は疲れ切った笑顔で「初めまして・・・私の可愛い子」ほんとに大きく元気な女の子だった。とりあえず一旦落ち着いたころに母親が抱っこをしていると父親が駆け込んで病室に入ってきた。「おい!大丈夫か!!」「しぃー!ほかの人もいるし赤ちゃん起きるでしょ!」声を細めて言った。「あ、ごめん。それで男の子?女の子?」「3175グラムの元気な女の子だって」「お!それはでかいな!すくすく育ちそうだな!」「もう!でかいとか言わないでよ!ふふっ」「ごめんごめん」父親は照れながら言った。そのあと何らかの障害や病気、感染病もなく無事に退院でき自分の・・・いや、自分たちの家へ帰っていった。早速母親が切り出した。「名前さーどうしよっか」口角を上げながら言った。「まぁ、名前なんてこれから一生使うものだしゆっくり決めればいいんじゃないか」「女の子だし結婚したら苗字変わっちゃうね」母親は幸せそうに言った。「結婚は俺の許可を得てからだな!」一家は笑顔に包まれていた。その時だけは・・・

名前をまだ決めていないころ父親は残業や育児のストレスでDVや浮気は絶えなかった。父親も最初は育児に積極的に参加をしていたものの、忙しくなり、ストレスが溜まり、浮気やDVに走った。DVも母親だけだったが、それだけでは済まなくなり、虐待にも突っ走ってしまった。名前のことなんて頭からはさっぱりと消え去っていた。母親はそれに耐え切れず置手紙を残して出て行った。「私の可愛い子。本当にごめんなさい。私は最低です。」とだけ書いて。娘を置いて逃げたのは小学生4年になった頃ぐらいだろうか。父親と二人きりになっても虐待は止まらない。「ただいま。」父親が酔っ払いながら帰ってきた。また女と遊んで帰ってきたであろう。「お帰り」温度のない声を投げかけた。「は?飯作れや!この出来損ないが!邪魔だからさっさと死ね!!」また蹴られる。痣ができることなんてほぼ毎日だ。「ごめん」ただそれしか言えない。晩飯を作ったが、女と遊んだ帰りに食ってくるため必ず残す。でも作らないと蹴られる。殴られる。そんな毎日が続き、中学にも行かず父親の世話だけしていた。自分の食料は父親が残した飯だけ。いつもそれでなんとか生きていた。高校にはもちろん行っていないが、高校二年生の年齢、17歳ごろになった。

次の朝「おい」父親に最高に目覚めの悪い声で起こされた。しかし父親は勝手に家を出て勝手に帰ってくる。起こしてくれる、なんてどうしたものか。「昨日はてめぇが生まれた日だ、たしか16か17か、ほらなんか買って来いよ」いつも暴言や暴力しか吹っかけてこない父親からこのようなことをしてもらっただけすごくうれしかった。「久々に家の外出るだろ?」「うん」「じゃあダンプカーとかいたらそのまま飛び込んで死んで来い」やっぱりこれだ。優しくしてくれたと思ったらこれだ。相変わらずだ。しかも渡されたのは、銅の硬貨一枚。まぁいい。行ってこよう。外へ出て思いっきり深呼吸をした。外の空気を吸うなんて何年振りか。この近くに何かあるのか・・・小学校のころコンビニに行った記憶がある。とりあえず人に聞いてみることにした。主婦三人組がいたので聞いてみることにした。「すいません、この近くにコンビニってありますか。」主婦たちは女の子を見てギョッとした。速足で逃げていくかのように去っていった。え、なにこれ。私避けられてるのか。とりあえず適当に歩いて自分で探すことにした。行くとこ先々にぽつぽつと人がいたがすべての人に避けられる。なんで、なんでよ、だんだん悲しくなってきて道のど真ん中で泣いた。泣きたくても家の中で泣けなかった分全部吐き出して泣きまくった。そんなことしてるうちに日は落ちていた。そんなとき「おいおい、大丈夫か?」うずくまっていたが顔を上げると、男三人が目の前にいた。「大丈夫か嬢ちゃんよ、とりあえずこっち来な、ここは危険だぜ」スキンヘッドの男が言う。細い路地裏に入ったらリーゼント男が言った「どうしてこんな状態なんだ、なにがあった」初めて自分を助けてくれた気がした。長々と訳を話した。そしたらスキンヘッド男が言った。「んなら俺たちのとこ来てもらうか」でも一応女の子には家がある。ついて行くわけにはいかなかった。「ごめんなさい。話聞いてくれてありがとうございました。でも帰るところはあります。」そしたらひょろい男に殴られスキンヘッド男に蹴られまくった。ひょろい男が下品な声で言った。「いいじゃん別にさぁ~」「失うものがねぇならさっさとついて来いよ」スキンヘッド男が言った。失うものがない?・・・あぁ、その通りだ。リーダー格のリーゼント男が近づいてこういってきた。「嬢ちゃんよてめぇは捨てられたんだよぉ。家帰ってもボコボコにされるだけだろ、俺たちが可愛がってやるからよ、」なんで悔しいのに言い返せないんだろう。その通りだよ。帰ってもまたボコボコされるだけだ。ひょろい男が手首を掴んだその瞬間、後ろから、「いい加減にしろ!!!」そう聞こえた。

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愛をください 幸せを教えて たけ @takeryo

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