愛をください 幸せを教えて

たけ

第1話いつもと変わらない

あぁ、憂鬱だ、毎回見てる光景だ、朝起きてまず見るのは自分の部屋の天井。でもいつもより気分はいい。なぜなら胸糞悪い5日間を終えて今日は土曜日だ。何か起こりそうな気分がするのは、毎週のことだろうか。今日も相変わらずの休日を過ごすであろう。パジャマのまま階段を下りトイレを済ませ、リビングで寝ている父親をたたき起こし、飯を作り、それを食べてからから母親の遺影の前で線香を焚くのだ。そのあとはぼーっとしたりテレビゲームをしたり、コンビニ行ったり、するのが生きがいだった。

今日はコンビニ行こう。村田隼人はとりあえず適当なジーパンとパーカーを着て家を出た、「うぇ、今日は風が強いな」独り言を呟きながらコンビニへ向かった。徒歩5分のとこにあるコンビニだ。特に目的はないがコンビニへたまに行っている。高校の友達は家が離れているので遊ぼうにも距離が遠いからめんどくさい。だから休日は一人で過ごすことが多い。とりあえず漫画でも読んでるか、

漫画を読んでぼやけているうちに日が落ちていた。もうこんな時間か、父親に晩飯を作らなきゃいけない時間だ。とりあえずダッシュで帰る。「ただいまー」だるそうに帰ってきた隼人は晩飯を作ろうとリビングに戻ったら、父親がいきなり叫んだ。「おせぇよ!隼人!」うるさそうに父親のほうを向いたら、足から出血していたのだ。訳を聞くと床に転がってたビール缶を思いっきり踏んでしまったらしい。「はぁ、親父バカかよ」と、言いつつも結構すごい出血だ「さっきどうせコンビニ行ってたんだろ!」なんだ知ってんのか「絆創膏買ってきてくれ!頼む!」ま、割と出血すごいから行ってやるか。隼人は頷いてダッシュでコンビニへ向かう。

とりあえず帰りの1.2倍くらいの速さでダッシュした。

その時だ、結構速めで走っていたが、どこからかの悲鳴は聞き逃さなかった。周りを見渡すがただのT字路しかない。あるとしても細い路地裏しか・・・はっ!路地裏?!ここだ!真っ先に路地裏に向かおうとしたが冷静になって考えた。ここの路地裏はとてつもなく評判が悪く人が近寄らない、カツアゲ、麻薬取引場、殺人だってこの路地裏で何件かあった。そこで悲鳴か・・・今日は何かありそうとはこのことか、と自分で勝手に解釈した「ここで助けるのが男!」高校2年にもなりながら中二病っぽいことを言いながら路地裏に突撃した。

目にしたのは3人の男に囲まれ蹴られていた可愛い女の子だった。隼人はやはり勇気がいるのかこっそり現場を様子見したのだ。ぱっと見た感じは同じ高校生な感じだ。男はとりあえずめちゃくちゃ厳つかった。スキンヘッド男、ひょろいが鉄の棒を持った男、リーダ格っぽい短いリーゼント男、昭和か!ってツッコみたかったがぐっと自分の気持ちを抑え男たちがなにか言ってるので耳を澄まし聞いてみた。

「いいじゃん~別にさぁ~」ひょろい男が下品な声でしゃべっていた。「失うものがねぇならさっさとついてこいよ」スキンヘッド男はさすがに心臓に響く声だ。リーダー格男が耳元で囁いていた。隼人はもっと耳を澄ます。「嬢ちゃんよてめぇは捨てられたんだよぉ。家帰ってもまたボコボコにされるだけだろ、俺たちが可愛がってやるからよ、」ひょろい男が女の子の手首を掴んだ。見ていた隼人は耐え切れず勢いで飛び出してしまった。「いい加減にしろ!!!」女の子の目を見たがどこか死んでいる。スキンヘッド男が近づいて耳元でこう言ってきた。「よぉ」隼人は拍子抜けしたが恐る恐る挨拶をした。「こ、こんばんわ」スキンヘッド男がまた囁き始めた。「今お取込み中だよアニメの見過ぎも気をつけな、ヒーローさんよ」腹を蹴飛ばされて隼人は吹っ飛んだ。「ひゃひゃひゃ!!うぬぼれってのはこわいねぇ!!正義は必ず勝つってそんな言葉あったっけ?ひゃひゃひゃ!」ひょろい男が叫んだ。隼人は蹴られる直前に全力で腹筋に力を入れたためそこまでのダメージはなかった。でも瀕死状態を演じた「待てよ・・・ぉぃ」ひょろい男がこっちを振り返りしゃべり始めた「まだやんのかよ!?ヒーローさんはお忙しぃねぇ!痛い目あってから俺たちに立ち向かえや!!」持っていた鉄の棒を振りかざしてきた。隼人は横に転がり鉄の棒をよけ全身に力を込め回し蹴りを食らわせた。隼人は小2から高1まで空手をやっていたのだ。理由は暇つぶし。努力はしていたため黒帯は取っている。鉄の棒を奪い取りひょろい男の顔面に鉄の棒でぶん殴った。ひょろい男は吹っ飛び、真っ先に逃げ曲がり角で姿を消した。ひょろい男は何とかなったが、問題はこのスキンヘッド男だ。「てめぇ面だせや」その瞬間右ストレートを食らった。隼人は倒れたがスキンヘッド男の急所を蹴り悶えて倒れたとこを後頭部を鉄の棒で殴りまくった。スキンヘッド男は動かなくなり意識が吹っ飛んだだけとみられる。あとはリーダー格の男だけだ!隼人は緊張し全体的に強張った。リーダー格のリーゼント男はジッとこっちを見ていた。睨むわけでもなく挑発的な目でもなかった。ただ温度がない目だ。それが逆に恐怖をあおった。リーダー格の男は何を思ったか、拍手し始めた。「いやーすごいな君は、勇気は認めようか、まぁ銀司くんは自業自得だねぇ調子に乗って先走らなきゃいい子なんだけどねぇ。健くんは捨て駒に使うつもりだったが逃げちゃったからなぁ」鼻で笑いながら言った。おそらく銀司とはスキンヘッド男であり、健とはひょろい男であろう。それにしてもこういう組合の方は仲間をすぐ見捨てるのか。はやとはそういえば、と女の子を見た。先ほどと全く微動だにしていないかのようだった。隼人は男たちに本題をたたきつけた。「なんでこんなことしていたんだ」男は言った「こんなこと?あぁ、彼女はなぁ深い重い事情があってな。引き取ってやろうとしたんだが、引き取り人はお前でいいんだな?」隼人は戸惑った「じゃあなんでここに来たんだ、用がねぇなら失せろ」隼人は急に腹立たしくなり「深い事情?暴力振ってただろ!おめぇがうせろ!」隼人は勢いに乗り発言した後、素早く全力で後悔した。ぶっ殺されるのを覚悟していた。男は腹の底から笑いだした「いいね!元気な子は嫌いじゃない!この女の子を君に託そう!」隼人はまた戸惑ったが心のどこかで一安心していただろうか。男が今度は小声で言ってきた。「今からこの子の責任は君だ。よろしくね。あと俺みたいにいい人ばかりじゃないから気を付けろよ。」と軽いデコピンをし、スキンヘッド男の銀司を放置したまま去っていった。隼人は足の指先から息を吸い上げ、体全体で安堵の息をついた。気づいたら真っ暗だった。とりあえず女の子に話を聞かなくてはこの状況が理解できない。

女の子にそっと歩み寄る。女の子は叫んだ「こないで!!!!」こうなるのも無理はない。と、察した。隼人は引き下がる。離れたところから話しかけようとしたが、「話したって何も分からない!!わかるわけない!!帰れ!!!」しかし女の子の目はSOSのサインを出しているかのように何かを訴えていた。

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