第4話 知られていないことは武器になると同時に叩かれやすくなる原因


「これは、白狐だね。また珍しいものを」


「はぁ……」


そう言ってヴェイン師匠は自分の頭の上で丸まって寝ている白い塊を見た。


ーーーーーーーーーーーー


あの後、ポーションをできるだけ飲ませ体の傷は各属性のヒールをかけて様子を見た。効きがよかったのはライトヒールだったのでありったけのMPでライトヒールをかけまくった。


そして目を覚ました時妙になつかれていた。


白狐 Lv.104

召喚モンスター 待機中


いつの間にか召喚モンスターになってるしっ!しかもレベル高っ!


そしてヴェイン師匠が帰ってきて今に至る。


「ずいぶんなついているみたいだし、連れていったら?」


「まあ、そうですね」


頭の上の白狐を膝に移動させ、なでる。白狐は気持ちよさそうに目を細めそのまま寝てしまった。


「……出かけるかい?」


「無理です」


だよねぇ、と苦笑いするヴェイン師匠。さて、本当にどうしようか。


「じゃあ、そろそろいい感じになってきたし色々と教えてあげよう」


「はい?」






「モンスターを拾って手当したらなつかれた。なるほど、意味わからん」


「だろ?」


宿題が終わらないと泣きついてきた黒鳥に手伝う代わりに相談に乗れと相談脅迫したところ全く宛にならなかった。ふざけんな。


「ちっ、役にたたねぇな……」


「なぁ、万田……お前俺の扱いひどくね!?」


残念なイケメンお前だからだ」


「ぜってぇ貶してるしっ!」


「そんなことはいい」


そ、そんなこと!?と泣きそうになるがこのまま付き合っていても話が進まない。


「今のところ、自体は確認されてないんだな」


「前あった時に話したよな、βの奴らは完全引継ぎをしてるって」


「あぁ」


βテスターはβ版で使っていたアバターが製品版でも使えるのだ。結果としてテスターと正規組では知識やNPCとの人脈などいろいろと差がある。が、黒鳥いわく自分におこっている事態はβでも確認されてない。


「ひとつ謝っていいか?」


「内容にもよる」


「えーっとだな」


渋る黒鳥にかなりイラッとしたから手に持っていたペンでつついてやろうとしたが避けられた。げせぬ。


「あ、あのな。お前が受けたクエストが影響しているかもしれん」


「……?」


クエスト?確か今受けていたのは


「弟子入りクエスト」


「あぁ。βでもそうだったが高レベルNPCへの弟子入りクエストは大抵がふつうに起きないことが起きる。たとえ話、


「……」


「ヴェインというNPCはβでもチートNPCと言われたくらいだ。どんな解析を使ってもレベルがわからない。見たことのない魔法を使う。運営お墨付きのチートNPCじゃないかって言われたくらいだ」


だから昨日のことがあったのだろうか。いや、それにしても昨日のあれは考えれば気づくものじゃないか。


「もうひとつ聞きたい。黒鳥」


「なんだ?」



「詳しく聞かせろ」






昨日あの後、白狐を膝で寝かしながらヴェイン師匠が一冊の本を持ってきた。


「魔道を極めるとなれるかもしれないものに【魔道王】や【魔導帝】というものがあるんだがそれはまた今度話そう。今はこれだ」


鑑定をしてみるといいと手渡されたそれは異様なものだった。


魔導乃為乃書物壱式 レア;不明

所有者;ヴェイン


「これは僕が昔使っていた魔法をまとめたものだよ。見てみて」


ページをめくるとそこには自分が持っている魔法がのっていた。レベル順に並べられているんだろうが後半のページは何も読めなかったがレベルが足りないからだろう。


「錬金術と魔法陣、そして魔法を習いし者であれば作れるんだ。だから今からファクラくんにはこれを作ってもらう」


「えっ、自分、本とインク持ってないですよ?」


「インクは僕のを使えばいい。でも、本はあるだろう?」


インベントリーを確認するとたしかにあった。〝新米魔導師の本〟だ。てっきり魔法の補助だけだと思っていたが記録する意味もあったのか。


「錬金術で記録するんだよ」


錬金術のアーツの一つだ。錬金術のアーツはこのようになっている。


練成 物質を全く異なる物質へと変性する

合成 物質を化学反応に従って異なる物資に変質させる

変化 物体に思うように手を加えることが出来る

記録 作ったもの、使ったものを記録する


ポーションを作る時に合成を使っていたが記録は何に使うのかわからなかったが、こういう使い方だったのか。


「これを使って」


「ありがとうございます」


ヴェイン師匠が持ってきたインクと羽ペンを使って一つずつ魔法を発動待機状態させて魔法陣を見て移していった。


「ヴェイン師匠。ちょっと質問したいんですが」


「なんだい?」


「魔道書から魔法は発動できるんですか?」


「試してみるといいよ」


ニコリと笑うヴェイン師匠。なにか企んでいるんだろうか。そう思いながら書いたばかりのファイヤーボールの魔法陣に魔力を流す。すると本の上で火の玉が出た。そして魔道書に書いてあった魔法陣のインク濃さが少し薄くなった。


だが少しずつ戻ってきている。これってリキャストタイムか。


「時間が経てば何度でも使えるよ」


まさかと思い自分の魔術欄を確認する。しかしリキャストタイムが表示されていた。


そんな上手くいかないか……。


その日は自分が覚えている魔法をすべて書き取ってログアウトし、今日、黒鳥に会ってその事を話した。


「それにしては気付かないもんだな」


「そうだな、よく良く考えればたどり着くかもしれないのにな。魔道書とか本じゃないか」


「いや、それを作れるとは限らんからなっ!?」


「やる気があればできる」


「精神論!?」


ーーーーーーー


黒鳥から宿題を奪い返し帰宅。まだ写せてないやら言っていたが知らん。やってなかったあいつが悪いし、最近現実をおろそかにしているあいつが悪い。前自分を放置したあいつが悪い。


結論、あいつが悪い。


「なぁ、ハク?」


「?」


膝の上で小首をかしげるハク。足元にグレアが丸まって寝ている。先ほどまでお楽しみでしたもんね、狩りを。自分がゲームで変なことをするわけがないじゃないか。ははは。


「さて、RENさんのところへ行きますか」


今日ログインしたときにRENさんからメールが来ていた。


『できました。取りに来てください』


メール不精なんだなと思い、『了解』と返信。自分もメール不精です、なにか?黒雲を召喚し西のフィールドを一気に駆け抜ける、わけでもなくエンカウントした敵を薙ぎながら街へ入っていった。そのままRENさんのお店に行く前に魔導書店をのぞいてみた。


「いらっしゃい、何をお探しで?」


THE魔導師がそこにはいた。煤けたローブに深々と被った帽子。


「ヴェイン師匠より魔導師らしいだ……とッ……!」


「えちょ、一応ヴェイン様のほうが上だよ?君ぃ!」


慌てて言い返すもんだから帽子がずれて素顔が見えた。ヴェイン師匠よりかは老けているように見える。軽く白みがかった髪。って、ヴェイン師匠の年わかんないわ。しかもヴェイン様て(笑)


「ヴェイン様が最近弟子を取ったことは聞いていたけど君だったんだね。僕はしがいのない魔導師だよ」


クロツィア Lv,???

魔導師 NPC 


相変わらずレベルは見えないが今までよりは見えるようになっているようだ。


「で、何を探しているのかな」


「魔導書ってどういうものか見たくてきました」


「……ヴェイン様のところで見れないのかい?」


「見たんですけど一般的なものなのか怪しかったので」


「否定できないね、あのひと天才肌だから魔導書作るのに癖が出るし」


そういってクロツィアさんは本棚から何冊か魔導書を取り出した。


『初心者教導書』

『中級魔導師の指南書』

『魔導王書籍 7巻』


「初心者はこういうもの、メイジなら中級。そして魔導を極めたいならこれだね」


「あ、いや、そうじゃないんです」


「ん?違うのかい?」


「魔導書がどう書かれているか参考にしたくて」


そういって、自分が持っている魔導書を取り出し、渡した。

クロツィアさんはパラパラとめくり何度か往復した後、ぱたんと閉じこちらを見た。


「君は本当にヴェイン様に指示しているみたいだね。書き方が全く同じだよ」


「疑われてましたか?」


「ヴェイン様を知らない人はいないよ。なんせ魔導を極め、作り出すことができる唯一のお方だ」


「作り出す?」


「君はまだそこまで至ってないみたいだけど何れはね。それならこれがいいよ」


そういってカウンターから古びた本を取り出した。失礼して識別をしてみる。


??? レア度;不明

所有者;クロツィア 製作者;#@+]


あれ、一切読めない。おかしいな。しかも製作者の所が文字化けしている。


「見るものによって変わる本なんだ。貸しておくよ」


「えっ、いいんですか?」


「ヴェイン様の弟子には恩を売っておいたほうがいいだろう?」


にやりと何かを企んだような笑みを浮かべる。うわぁ……なんかヴェイン師匠があんなところにいる理由ってこうゆうのじゃないのかな……。


本を受け取り書店をあとにする。最近素材がたまっているしRENさんに売ったらいい値段になるだろう。


「いらっしゃーいって、やぁ。ファクラくん」


待ってたよと言うように手招きする。自分は周りの武器を見ながら奥に進む。


「増えましたか?」


「まあ、欲しい人が増えてね」


「良かったじゃないですか。って、喋り方……」


「初見の人はね……まあいいじゃないか!依頼されたものだよ」


テーブルの上にはたたまれたレーザーアーマーがあった。


「甲皮を弱い場所に継ぎ足す感じだよ。防御力はかなり高いから使い勝手はいいよ」


「ありがとうございます」


早速装備する。かっちりとハマるし魔術師装備より軽い。


「で、値段なんだけど」


「素材で行けますか?」


「うん。確認させて」


RENさんに確認してもらい精算を済ませる。


「それにしてもすごい素材収集力だねぇ」


「狩ってたらいつの間にかそうなりますよ」


「……普通に狩ってもならないから!」


そんなに異常なのかな、自分は。


烏の野郎も変なこと言ってたし、でも、ヴェイン師匠はもっと狩っていた。あ、でもヴェイン様って言われてるくらいで凄いのか!


「うーん、確かに異常かもしれないですね……」


「うん。てか魔導師なのになんで剣使うの?」


「そっちの方が楽だし」


「……それだけ?」


「うん」


RENさんにため息を疲れた。何がおかしいのだろうか。


そういえばここに来て思い出した。


「……種族忘れてた」


「ん?種族かい?種族は確かに確認しないと」


「そんなに大切ですか?」


「種族特性は知ってるんだよね?」


「えぇ。ステータスに加算されるらしいですよね」


RENさんは頷く。


「僕はヒト族とドワーフ族のハーフなんだ。だから筋力値に加算されやすい」


「へぇ……ドワーフ族は知ってましたが知ってるとおりなんですね」


「まあね。じゃあ、一緒に行かない?」


「いいんですか?」


「ちょうどギルドに用があったしね」


そう言って武器を持って店を片付け始めた。片付けている最中変わった武器を見つけた。


「……」


ただの棍棒のように見えるがこれはどう見てもあれの可能性が高い。


「どうしたん……あぁ、それか。何かわからないんだよね」


「棍棒の先が八つに分かれている神話の武器があります」


「呪いではないんだね」


「えぇ。これ買うならどれくらいいります?」


「ただだよ?」


「ふぁい?」


「だって持ち上げれないもん」


そんなの武器じゃないという。そらそうだ。

だが今の自分じゃこれは振えないだろう。


「また、今度の時に」


「うん。じゃ、行こうか」


道中、街をしっかりと見ることが出来た。中世ヨーロッパのような外観はすごく綺麗だ。そこに立ち並ぶ屋台。識別をかけなければプレイヤーとNPCの見分けがつかない。プレイヤーが屋台を出しているところでもNPCが買い物をしているのを見かける。それもすごく面白いと思うがそれよりも


「なんでこんなに注目されているんですか?」


「あははは……」


RENさんが乾いた笑いを浮かべるがその真意はわからない。が周りの人、特に冒険者がこちらを見ている。


「有名人なんですか?」


「……さー」


「RENさんっ!」


「きのせいだー」


棒読みでそんな事言われても困るんですけど!


「ヨォ、黒小人ドウェルグ。元気カ?」


「……なつかしい


いつの間にか目の前に黒い外套を羽織った青年と白いワンピースの少女が。


「……犯罪臭がするっ!」


「おいコラァ!何なんダ!この野郎ッ」


「……大当たり


「使い魔に言われるって終わってるね……迷宮王ダンジョンエラー


「あれッ!?おれが悪イノカ!?」


一瞬身構えてしまったが、なんだ。悪い人には見えない。それどころか弄られキャラじゃないか。


「色々と企んでいた奴らがいるって聞いてヨ、戻ってきて動こうと思ったら【放蕩王】いたずらや【英雄王】レイド狂いが来てたもんだから動けなくなっていたんだよ……なんだってんだヨォ……」


「「あぁ」」


【放蕩王】とは国外で暮らし続け、町での滞在時間よりも外の滞在時間が4倍の場合、及び各国の国王の承認などなどいろいろなハードルを越えてなる超越職と公開されている。


そして【英雄王】。各国の国王の承認、20、特定の固定メンバーでいること。


特に難しいのは2番目だ。レイドクエストはいつ発生するかわからない突発レイドと決まった場所、時間で発生する制限レイドがある。突発レイドとに遭遇する可能性は低い。かなりの日数プレイしているはずのβ勢でもあったことがないというくらいだ。


故に両方ともまだ1人しかいない超越職だ。


破城 Lv.???

??? プレイヤー


虹翠 Lv.???

使い魔 ???


「破城さん、はじめまして。ファクラです」


「おう、俺は【迷宮王】ダンジョンエラーと呼ばれる超越職についてるプレイヤーだ」


「……よろしく


出された手を握る。超越職と会うのは二回目……だよな。あれ、キャンベラさんはどうだったっけ……でも、烏は確かに超越職だった覚えがあるがどれかは聞いていない。


「で、君がここにいるとなにか起きそうな気がするんだけど……ねぇ……トラブルメーカーさん?」


破城さんは手を挙げ首をすくませる。心当たりがあるのだろう。


「最近、軍団レギオン最後の1人がここにいるっていう噂がたってナ。興味本位で来たんダガ、ガセだったみたいダ」


「……(´・ω・`)


虹翠さんが破城さんの方に足をかけパタパタと動かす。まるで飽きた子供のように可愛らしくやっているが、足が破城さんの胸に当たる度にドゴドゴという音が聞こえる。


破城さんが軽く口の端から血を垂らす。


「だ、大丈夫ですか!?」


「い、いつもの事ダ……虹翠、降りてクレ」


「……いや


今度は暴れ始めた。出血がひどくなるとともに見る見るうちに減っていくHP。


「虹翠ちゃん。ペロペロキャンディーあるよ?」


「……たべる


見えない速さでRENさんのところに行きキラキラと目を輝かせ待っている。アイテムボックスから虹翠さんの顔ほどある大きなキャンディーを取り出し与えた。


虹翠さんは一心不乱に食べ始めるのを見ていたらいつの間にか破城さんが復活していた。


「なんでマスターより懐いてんだヨ!」


「人格じゃないかな?」


「うグッ」


あ、トドメ刺された。


ーーーーーーーーーーーーーーー


|ω・){ 久々すぎる更新だよね


|ωΦ*){ 作者、何か言いたいことはあるかにゃ?


作者{ すっかり忘れてた(泣)


|ω・){ 更新再開、でいいんかな?(怒)


|ωΦ*){ いいんかにゃ?(怒)


作者{ ( 'ω')ウィッス


と、いうわけでこの場を借りて皆様に謝罪をさせていただきます。

週一更新やってやろうじゃん?って思っていた二か月前の私を殴りたい。テストがあって出来るわけないじゃん、おいこらぁ!です。

本当に申し訳ありません!

この小説を読んでくださっている数少ない方々に申し訳なく、できるだけ早く更新しようと思いましたら他の小説の締切に追われてしまい……


という言い訳をしても意味無いですね。本当に申し訳ありませんでした。・゚・(ノД`)・゚・。


できるだけちょこちょこと更新していこうと思うので読んでくださると嬉しいです!


オリジナリティ溢れるという訳にはいきませんが、この手のいろいろな小説に似ないように手を加えていきたいので皆様暖かい目で見守っていてほしいです。


長文、失礼いたしましたm(*_ _)m

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最強のギルドに至るまで はシまゆキ @siki0723

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