桜咲くいなかの町で
双乃樹
桜咲くいなかの町で
◇
大阪府にある小さないなかの町交野市。
俺、彩咲ひろきと幼馴染の一ノ瀬都希は育った。
そこは桜の名所と言われて、春になったら花見をする人が
よく見受けられる。
「ひろちゃん。ひろちゃん。桜、綺麗だねっ!」
隣を歩く幼馴染がそんなことを言う。
それは幼稚園の頃から春が来ると必ず都希が言ってくれる言葉。
一体何が楽しいのか毎年そう言っては微笑みかけてくれる。
俺もそれがなぜか嬉しくて、
「そうだな」
と、毎年のお決まりの言葉を言う。
中学の正門を抜けて桜並木の道を歩く。
「おっ! ひろき。継未ちゃん!」
校庭では中学時代の友達がブルーシートの上からよんでくる。
俺と都希は顔を見合わせて、頷き皆がいるブルーシートに向かう。
今日は俺たちの中学の同窓会兼花見。
中学の敷地を使って、懐かしいメンバーや今も変わらず仲のいい友達と
一緒に花見を楽しむ。
俺と都希は二人で途中で抜けだし、ある場所へと向かう。
しばらく歩いて高校の横にある道を通る。
すると、お墓が見えてくる。
そこは俺の母親のお墓。
俺が小さい頃に亡くなってから毎年春になるとこうしてお墓参りにくる。
今日が母さんが亡くなった命日。
俺と継未はお墓を掃除して花を添え
二人で手を合わせ目をつぶる。
母さん、俺都希と結婚するんだ。
「ひろきはどんな大人になるかなぁ」
母さんがそう言って俺の頭を撫でる。
「おとなになったらね。わたしとひろちゃんはけっこんするの!」
「そっか、そっか。それは楽しみだね」
都希がそう言うと母さんは笑いながらそんなことを言っていた。
それは母さんが亡くなる前に来た最後のお花見の時の記憶。
毎年命日の日にお花見がする。
それは母さんが生きていた頃からの恒例行事だから。
俺は目をあけると、都希はまだ手を合わせていた。
「結婚式、お義母さんにも見てもらいたかったなぁ」
目を開けた都希がそんなことを言う。
「そうだな」
俺がそう言ったその時ふいに風が吹く。
風で桜の花が舞う上がる。
まるで母さんが俺たちの結婚を祝福してくれるかのように。
「じゃあ、そろそろいこっか! きっと皆心配してるよ?」
都希がそう言って、俺に手を差し出す。
俺は手をだして、手を繋ぐ。
来た道を歩き中学へと戻る。
あっ、そうだ。
母さんの墓参りに来た時に報告するのはもう一つあった。
毎回報告することは、二つある。
最近の出来事と、もう一つ。
それは───
母さん、俺、二十歳になったよ。
桜咲くいなかの町で俺は今日も隣にいる大切な人ととびっきりの毎日を
二人で過ごしていく。
少しずつ、少しずつ、母さんたち見たいな夫婦になれるように、
俺と都希。二人で少しずつ近づけるように歩いて行こう
「ひろちゃん?」
「いい夫婦になろうな」
不思議そうにしている都希に言う。
「うんっ!」
いつも笑顔を向けてくれる大切な人と一緒に
桜咲くいなかの町で 双乃樹 @kanonene1951
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