悪夢…再び

 家に着いてからも、ずっと事件のことばかり考えていた。

シャツを脱ぎ捨てベッドに横たわる。

色々とありすぎたせいか、いつの間にか眠っていた。

薄暗い闇の中…

 ―ああ、またいつもの夢だ。

  でも、何だかいつもの夢とは違っていた。


いつになく、鮮明な夢。

彼はその光景を見ていた。


六畳ぐらいのクローゼットらしき場所で荷物の陰に隠れて何かをしていた。

フローリングに敷かれた毛布の上で、大人の男と幼い少年が裸で抱き合っていた。

―あの少年はボク?そして男は母親と離婚した、ボクの父親だった男だ。


 「もう許してよお。」

泣きながらも父親に懇願する少年。

 「いい子にしてたら、すぐ気持ちよくなるから。」

ねっとりとした父親の声。

身体をねちっこく触られ、父親の舌で彼の体が汚されていく…。

 「い…やあああああ!」

絶叫に近い少年の声。

それでも父親が行為をやめることはなかった。

むしろ、自分の男性器を握らせる。

 「ほら、パパのをその手で擦ってごらん。

  キミの小さいここだって反応してるよ。

  こんないやらしい姿を、お母さんが見たらどう思うだろうね?

  嫌われちゃうかな?

  そうこれは、僕達だけの秘密だよ。

  誰かに言ったりしたら、

  今まで撮った写真や画像をネットに公開しちゃうからね?」

顔を背け耳をふさぐが、リアルな声が音が聞こえる。

 「い…たい…よお。」

 「我慢してれば、気持ちよくなるよ。」

父親は身勝手な性欲を彼にぶつけていた。

その行為は母親のいない日は決まって行われていた行為。

僅かな抵抗さえ押さえつけられ地獄のような時間が続いていた。


 「いやだ!もう、やめてくれ!!」

その場で叫び泣き崩れる彼。

しかし、声は届かず、目の前で父親との行為が続いている。

全て思い出した。

これが封印された記憶。

父親の性的虐待は六歳から十歳まで続いた。

ネットに公開されると脅されていた彼は母親にはもちろん言えず、

ただ一人で泣きながら耐えていた。

母親が父親の異常な行為に気づいたのは十歳の時、

彼が行為の最中に父親を金属バットで何度も殴り、

返り血を浴びたままクローゼットのドアの前で倒れていた事がきっかけだった。

その時の記憶だけは覚えていなかった。

しかし、所詮は子供の力で殴ったので、命に別状はなかった

そのことが原因で父親と母親は離婚。

離婚成立した時には、彼の心は壊れていた。

何度も心療内科に通い。

色々な治療も受けたが、彼の壊れた心は簡単には戻らなかった。

生きてるかどうかもわからない。動かない体

眠りにつけば、奇声を上げて何度も看護師に取り押さえられ

鎮痛剤を打たれる毎日。

一年近く通いケアするのをあきらめて、

催眠療法で記憶を消すことで彼の普通の日常は戻っていった。


 「全て思い出したみたいね。」

今度は背後から、はっきりと聞こえた。

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