そしてまた春

寺が桜の神隠しにあっている。


満開の桜が通せんぼするように、仏への道をぼやかしている。


「お前が進む道は、それであっているのか?」

「その先にお前が探し求めるものがあるのか?」


その春も紀三井寺の桜は僕に優しく問いかける。


紀三井寺の桜は僕の決意を惑わすかのように咲き誇る、咲き踊り乱れている。


もう一度、挑みたいんだ。

同じ夢に挑むんだ。

東京からではなく、帰郷したこの土地、和歌山から。


桜が道を開け、僕は足を前に進めた。


振り返る道は桜で鎖され、もはや前しか見えない。

僕の決意を誇らしげに咲き誇る満開の桜が僕の道を示す。


おわり

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帰郷(仮) 我是空子 @--y--

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