最終篇 「少年時代」とは何か
この作品は私の「少年時代」をある奇異なモチーフによって切り取って貼り付けた、思い出エッセーである。奇異なモチーフというのは本当に「文学」であるかどうか、作者さえも自信がない内容を示している。というのは、文学でないもので高いものを試みているかどうかさえも怪しい。しかし、なんにせよ作者が物語らないことにはどういう意味合いの説明なのか、それも判断できないので、始めるとする。
私の幼稚園時代から話そう。今でも断片的に要所要所で覚えている。私が年中の時(1984年ぐらいだと思う)私は悪ガキだった。悪ガキと言っても強い奴にへばりつく舎弟に過ぎなかった。しかし、私は親分をどうしてもケンカで倒したく、その晩、父に相談した。私は親分がケンカが強いから認めているんだと言うと、父は狂ったように「倒せ、そんなバカに負けるな」と言った。私はその一言で、親分のイメージがガラッと変わり、親分がもの凄く恥ずかしくなって、次の日、ケンカで見事に親分を倒した。
私は結果的に「ガキ大将」という地位に上がった。それは私には悪くないことだった。僕は幼稚園の人気者になった。子分もできたし、女の子にもチヤホヤされた。ところが、私は、本当の自分がワルを望んでいないことに気付いた。私はその時、ガキ大将を降りて、ワルをやめることを決意した。その晩、また父に相談した。「俺、ワルをやめようと思ってるんだけど?」僕がそう言うと「やめろ。真面目になれ」と父が言ってくれた。そして僕は小学校から真面目に転向することになる。
小学校一年に入り、僕は念願だった真面目になることができた。ただ、世間体(ワル仲間たち)からは「あいつは終わった」と噂された。僕をせせら笑う者さえ現れた。それまでがチヤホヤされていただけに、相当苦しかったのを覚えている。ワル仲間と別れた。でも、悪いことばかりではなかった。ワル仲間と別れて、マジメな男子と付き合いを始めることは自分の最も希望した境遇であった。私はとりあえずは学級委員になろうと立候補した。しかし、これは三年間落ち続けた。幼稚園時代の知り合いが誰か票を入れるだろうと思っていたが、無残であった。また、私を薄ら笑う者が出てきた。
小学四年生にもなると、僕の思いもみんなに伝わりだした。僕は生徒会の書記に立候補し、当選を果たした。三学期に学級委員にもなれた。そして小学校五年では副会長を、小学校六年では生徒会長に当選した。やっとだった。会長になった時は母親が大きくなった私を抱きかかえて喜んでくれた。小六にもなると、生徒会の役員やら学級委員やらは(僕に)任せておけばいいという雰囲気に達するぐらいまで僕は成長した。僕個人としては明らかなぐらい成長と呼べるものだった。
中学に入ってからはもうしんどいということで生徒会にも立候補していない。だから、至ってここで書く必要はないと思う。決して人生を諦めたわけではなかったが、中学とその次の高校は平凡と言えばそれはそうだろうと付き合いの長い友人も言うに違いない。結局、小学校が自分としては一番輝いた時期だったのではないかと思われる。幼稚園はとにかくやんちゃで、その時期だけ取っても何の満足も評価も値しないだろう。しかし、今回の話は自分自身でも書いてて楽しませて頂いたと感謝している。誰も感謝されたと喜ぶ人はいないし、感謝されたことすら不愉快に思う人がいるのであろうけれども。
清らかな白鳥 だざいおさむし @geragetter
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