第18話〈最終話〉
一生懸命な央を見ていたら、愛おしくて達してしまいそうになる。
「ごめん、央。もういきそう」
上目遣いで央がこちらを見る。どきりとする。
「央とつながりたいんだけど、いいかな」
最後までしてみたかった。愛おしい気持ちはあるけど、自分が男同士の壁を超えられるのか、今行けるところまで行きたい。
「…本当にできるんですか?」
少し潤んだ目で央が言う。
「ん、ほぐすもの借りる」
部屋にあったハンドクリームを借りて、央の後ろをほぐす。少しずつほどけて、指を増やす。声に甘さが混じり始める。
「ン…!」
「央、いい?」
央が声を出さずに小さく頷く。思っていた以上に狭い場所。傷つけないように進む。
ぎゅっとしめつけられて、快感が全身を震わせる。でも、それ以上にじんわりとした幸福感が体を包む。ぎゅっと寄せた眉間にキスをする。
「ここまで来るのに、時間かかって、ごめん」
央が目を開いて、泣き笑いみたいな表情をした。愛しい。鳥肌が立つような幸福と快感。セックスって、こんな気持ちになるものなんだ。
翌朝、幸せな気分で目覚めたら央がじっとこちらを見ていた。
「おはよ、央。な、何?」
「嘘なんじゃないかと思って」
「えっ?」
「いつ、やっぱり無理だわって言われるのかなと思って」
深刻な顔つきの訳だ。
「うーん…。言い訳できないけど、自分がバカすぎて。俺、央のことずっと好きだったんだよ」
「ずっとっていつからいつですか」
「んーと、益子に行ったくらいからドキッとして、今まで」
「別れて他の子と付き合ってましたよね」
「うん、気づいてなかったんだよな、好きだって」
央か怪訝な顔をする。
「意味わかりません」
「そうだよなあ。自分の気持ちもわかんないなんてなあ。だけど、央とつきあいたんだけど」
む、という顔をした央が黙る。背中を向けて、布団にもぐりこむ。
「ずるいです…。はあ、やっと新しいステップに進もうとしてたのに」
布団ごと抱きしめる。間に合って本当によかった。
「うん。頑張るから検討してみて」
もぞもぞと布団が動いて、顔が出る。
「…検討だけですよ」
頬が少し赤い。
「うん。よろしくな」
広がる央の世界に、自分も存在していたい。陶芸家だってなんだって、央は央だ。クールに見えるけど不器用で、なぜだか自分みたいな人間をずっと好きでいてくれた。また自信がなくなっても、今度はカッコつけずに言える気がする。どうしてもなくしたくないから。かっこ悪くても足掻いても、何とかして一緒にいたい。
それだけのことに気がつくのに、時間がかかった。遠回りして央を傷つけた。でも、間にあった。本当によかった。央をじっと見る。不機嫌そうな、でも少し嬉しそうな顔にキスをした。
君と紡ぐ 宮原にこ @Goro56
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