くらがり峠の思い出


 そこは奈良と大阪の県境、生駒山の峠にあります。

 私が暗峠に行ったのは地元の子に夜景が綺麗だから見に行こうと誘われたときの事です。


 日本で夜景が綺麗な山といえば、函館山などを想像しませんか? 私は暗峠の何年か後に行きましたが、夜景で有名なだけあって整備されていて、寒い以外はとても素敵な所でした。


 さて、一方の暗峠ですが、暗越奈良街道くらがりごえならかいどうとして日本の道百選にも選ばれているそうです。歴史のある石畳の道に瓦屋根のお家が立ち並ぶ風光明媚な所です。昼は。


 しかし夜景は夜です。暗いです。

 私の記憶では街灯がなく。真っ暗闇でした。そして急勾配の古い坂。夜間の山道を通ったことのある方はお分かりと思いますが、かなり暗闇の急カーブはかなり恐ろしいです。

 そして暗峠は他の山道のように木々に覆われたりしていません。道の周囲は崖のように見えました。しかも古い道なので道幅が狭いです。しばしのアドベンチャーをお楽しみ下さい。


 そんな道を登りきると少し開けた所があり、大阪の夜景を楽しめます。とても綺麗な景色です。恐怖を克服したご褒美、是非体感してみて下さい。

 さて、楽しい時間は早く過ぎていくもの、今度は暗峠を下っていきましょう。


 行きはすごい坂だな〜ぐらいの感想だった道が別の牙を剥きます。すごい角度なのです。調べたら日本一らしいです。その斜度約三十度。

 きっとこの峠を越えた貴方には素晴らしい思い出が残っていることでしょう。


 さて、夜の怖さは書かせていただきましたが、風光明媚な昼はどうなのか? そこは酷道こくどうなんて呼ばれ方もする日本一急な坂道、貴方の心を打ち砕くことでしょう。

 しかしここは古くから多くの日本人が歩いてきたのです。難波に、平城京に伊勢にと続く道、街道なのです。大丈夫。歩いて登ると石畳に石灯篭、棚田に石仏と美しい日本の原風景が広がっているのです。そこは日本の道百選。酷道だから選ばれたのではありません。美しい、いい道だから選ばれているのです。


 奈良の特徴はさびだと思います。風景のそこかしこに古びたおもむきのある景色が楽しめます。京都の凜としたきらびやかさもいいのですが、奈良は初めてでも何故か懐かしく、心休まる所です。


 そんな奈良は京都から急行電車に乗れば三十分で行けます。暗峠は奈良と大阪の県境。お越しの際は道に、お気をつけ下さい。

 そうそう、奈良でご飯を食べるなら、柿の葉寿司をお勧めします。鮭や鯖の押し鮨です。柿の葉に包まれているから手も汚れず、どんな坂の途中だって食べられます。


 貴方に素敵な、おいしい旅の記憶ができますように。


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くらがり峠の思い出 陸 巴夜 @KugaTomoya

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