償いのゲーム〜死後の世界にて〜

星乃優

第1話 プロローグ

「やだ、やだよお兄ちゃん!お別れなんて嫌だ!」


全く最後までうるさい妹だ。最後ぐらい静かに見送ってくれよ。

なんて言葉が頭に浮かんだ瞬間、無意識のうちに目から涙がこぼれた。

うるさい妹の声や両親の涙をすする音がだんだん耳から遠のいていく。そうしてある真理に行き着いた。


『ああ、これが死か。死とはなんて孤独でなんて虚(むな)しいのだ。』


死んだら自分はどうなってしまうのだろう。

生まれる前の記憶が無いように、死んだあとは無になるのだろうか。


そんなことを考えるとどうしようもない恐怖に襲われた。


「死がこんなに怖いものならもっと……生きたかったなあ……」


最後の最後にそんなワガママを口にして俺は死んだーー。



『死ぬことが一番の恐怖だと思った?』


誰かがそう俺に問いかけた気がした。


『たいていの人間がそうなんだ。死ぬ瞬間に恐怖を覚えて死ぬことが最大の恐怖だと思い込む』


この話し方だと俺はとうに死んだのだろう。

死者にも意識ってあるもんなんだな。

俺はどこにいるのだろう、目は見えるのだろうか、声は出せるのだろうか。


『残念だが本当の恐怖はこれから!死後の世界こそ一番の恐怖!』


俺は何も返事をしてないのに1人でここまで熱く語るとは。まるであのうるさい妹と会話をしているみたいだ。


『死後の世界へようこそ! 海崎大地(かいざきだいち)。貴様は何年で天国へ行けるかな!? 地獄ゲーム(ヘルゲーム)スタートォ!!!』


ここはどこなのか、声の主は誰なのか、何故俺の名前を知っているのか、ヘルゲームとはなんなのか、わからないことだらけなのになんの説明もせずに声は消えた。

そして地獄は始まりを告げるーー。

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