第3話 運命。
「この
一同困惑の展開。
果たしてこの物語。一体どれくらい続けるのか。
前代未聞のアンケート企画小説。
「俺の名は。」第3話です。
バイクにまたがったモヒカン軍団に囲まれたバンカラ風の巨漢こと西郷輝盛。
彼らは超寵児学園の生徒だけが持つ生徒手帳を狙っていたのだ。
「取れるものなら取ってみろ。ただし、無傷では済まんぞ」
西郷の鋭い眼光がモヒカン達を睨め付ける。一瞬、モヒカンオオカミの群れが尻込みするが。
「関係ねえ。こっちは8人だぞ!?負けるなんざありえねえ!やっちまえ!」
息巻く一人のモヒカンの雄叫びにより再び士気を取り戻した。西郷は感じる。此奴ら、たただの烏合の集ではない、と。
西郷は全身に気合いを入れ闘気を両の手に集中する。五分五分だ。
「ヒャーッハァーッ!!」
モヒカンリーダー(仮)が一週間ぶりの奇声を上げて西郷めがけ突っ込もうとした、
その時だった。
「おいおい。8:1って。それなんのファン感謝祭だい?」
突然、西郷とモヒカン達の間にR指定も裸足で逃げ出す際どい発言で一人の男が現れた。
「なっ!?いつの間に!?」
これはモヒカン達だけでなく西郷も思った事である。この男、全く気配を感じれなかった。
「それとも、なんかの座談会かな?」
おののく周囲を尻目に男はマイペースかつ淡々とした口調で喋り続ける。
「一人の男を大勢で囲んじゃって。寄ってたかって何しようとしてたのさ?」
男は全身白い詰め襟の学生服を身に纏っていて、キラキラとした銀髪のロングヘアーを風になびかせている。
「な、なんだてめえ!いきなり割って入って来やがって!怪我してえのかクノヤロー!!」
モヒカンの一人が手に持っていたナイフを長髪男目掛けて投げつける。
「シャオロン!」
しかし長髪は目にも留まらぬ速さと奇妙な掛け声を発し、素手でナイフの軌道を逸らした。
軌道を逸らされたナイフは長髪の横をすり抜け、西郷の学生服の右袖を切り裂いた。
「危ないなあ。怪我したらさあ。どうするつもりなワケ?怒っちゃうよシャオロン!」
長髪の男はまたもや奇声を台詞の途中で発しながら身体を大きく一回転させた。
「あーん!?なんだぁ?」
まるで、長髪がダンスを踊ったかのように見えたモヒカン達は自分達がおちょくられていると思ったらしく怒りを露わにし始めた。しかし、異変は突如起こる。
「へぼわぁ!」
「むなしゃ!」
「かぱわぁん!」
数人のモヒカンが突然白目を剥いたかと思うと、口から泡を吹いてその場に突っ伏した。
「ひぃぃぃぃ!」
「なんなんだあ!」
不敵に微笑む長髪の表情を見て、西郷を含む誰もがこの男の仕業だと悟った。
「もしもこれ以上続けるなら。次はちゃんと命をとるよ?」
その台詞を聞かぬウチに、倒れた仲間を背中に背負ってモヒカンオオカミ達はバイクにまたがりつむじ風の様に去って行った。
後に残されたのは西郷と長髪の男だけ。
砂粒が、音もなく地面を転がっていくのだった。
しばらくの間、二人は沈黙のまま見つめ合った。口を開いたのは長髪の男からだった。
「アンタ、礼もなしかい?」
「うん?」
西郷は長髪の男の顔をまじまじと眺めていた。気品と妖艶さを兼ね備えた整った顔だをしている。だが西郷が始めに感じた印象は、氷のつららの様に冷たく鋭いものだった。
「解ってないのかよ。アイツらこの辺でウチの生徒を狩りまくってんだ。アンタも、老けてるけど新入生なんだろ?」
確かに西郷の格好は学生以外の何者でもない。詰まるところこの男は、西郷をあのモヒカン達から助けたと言っているのだ。
「助けてもらったら礼くらい言うもんだぜ。大将」
そう言って長髪は西郷の胸を肘で小突いてみせた。西郷は男の雰囲気に苦手意識を感じ始めていた。
「礼を言いたいところだが、アンタの名前も知らない。それに、誰かさんがナイフを仕留め損ねたせいで大事な一張羅に穴が空いてしまった。まだ校門も潜ってないのにこのざまだ」
西郷がそう返すと、長髪は一瞬キョトンとした顔付きになっていたがすぐに破顔し声を出して笑った。
「いや参ったな。確かにアンタの言う通りだ。俺はカルロス・
カルロスはそう言って握手を求めてきた。
「
西郷もそれに応じ手を伸ばした。カルロスの手は柔らかくて真っ白だったが、温度をまるで、感じない真冬の池に手を突っ込んでいるようだった。
「よろしく。TERU」
しかしカルロスの微笑みから暖かさを感じたのだった。西郷には全くこの男が理解出来なかった。
「しかしどうするかなあ。TERUの制服はウチのじゃないから弁償ってわけにもいかないし。かと言ってそのままで新入生ってのもみっともないしなあ…あっそうだ!」
カルロスはまるで無邪気な子供の様に微笑む。
「俺さ、学園の寮で生活してんだけどここから歩いて10分もかからない場所にあんだわ」
「それがなんだ?何が言いたい?」
西郷の怪訝な表情を物ともせず、カルロスは変わらずの無邪気さでこう言った。
「まずウチさぁ、裁縫セット…あんだけど…繕ってかない?」
ごくありきたりなカルロスの台詞だったが、どうしてか西郷は背筋(主に下の方)に言い知れぬ寒気を感じたのだった。
続く、ざるを得ない
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます