第18話 すねすね

 猗綺子さん~。


「なんですか、美弦くん」


 僕の出番、なかなかないですね。


「綺音の学校生活ですからね。きみは出てこないでしょう」


 ……そうですよね。


「あれ、出たいんだ」


 そりゃあ、そうです。


「大人しい美弦くんでも、出番は欲しいのかぁ」


 にやにやしないでください。だって、そのために生まれてきたんですから。


「いや、読んでくださる方々は解ってくださっているはずだよ。出てこないときの登場人物たちも、ちゃんとその間も生きているって」


 そうかもしれませんけど、でもぉ。寂しいです。ぼくだけ皆と演奏できなくて。


「次の年は綺音たちと同じ学校じゃないですか」


 それまで待てと?


「ごめん。酷だよね」


 はい。

 『薔薇祭』は観に行けるんですよね?


「ん? どうだろう。たぶん、ね」


 そこで参加はできないですか?


「……まだまだ先の話だから……」


 それはないですよぅ。

 来年よりは早いでしょう?

 執筆のスピード、もしくは作中の時間のスピード、早めてください。


「うっ。執筆のスピードについては、本当に面目ない」


 そうですよ。遅筆のあまり、結局7万文字ほどで期間が終わってしまったんですよね。

 みなさんに応援してもらったのに。

 ここで宣伝までしたのに。


「ごめんなさい。申し訳ないです。本当に……」


 ……まあ、でも、猗綺子さんにしては、なかなか頑張りましたよね。

 ここまで早く書いたのは、はじめてじゃないですか?


「どうだろう。公開停止処分を受けた、『いばら姫は愁えない』のほうがサクサク進んだ気がするけど。あれは、童話のオマージュだからね。流れが決まってるぶん、苦労なく書けまして」


 ……ああ、いちばんPVも伸びていたんですよね。

 だからこそ、なんでしょうか。

 公開停止処分。


「わからないです。当時は携帯のアドレスで、運営さまと連絡がとれなかったから。問い合わせても一方通行だったんです。まあ、忘れましょう、あれは」


 そうですね。

 じゃあ、負けないほど頑張って、『風花(略)』のつづきを書いてください。


「はい……」


 そして、僕の出番をください。


「そーきたか」

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