第12話 ぐちぐちぐっち愚痴

 どうしたんですか、猗綺子さん。お顔が強ばってますよ?


「どうもこうも……きみの姉君に苦しめられているんです」


 ああ。進みませんか?


「ん~。胸キュンドッキドキには進んでいかないね、なかなか。綺音ってば、女の子女の子してないんだもん」


 そう言われましても……。


「結架の娘でしょー? 予定では、もっとガーリーな性格のはずだったんだけどなぁ。性格も集一の勝気なところが似ちゃったかなぁ」


 勝気って……パーパ、嘆くよ?


「いやあ。彼は少年時代、相当に芯の強い子だったからね。今のソフトさが信じられないくらい」


 そうなんですか?


「そりゃもう。学校はサボって抜け出す、テストは白紙で提出する、三者懇談は逃げると、まあ酷いヒドイ」


 うわぁあ、おじーさま、怒っただろうね。


「怒髪天を衝く」


 僕、パーパのそういう大胆不敵なところも尊敬しちゃうなぁ。


「きみには無理でしょ」


 無理です。ウサギのハートらしいですから。


「なにそれ?」


 やだな。綺音が言ってたんですよ。ぼくのハートはウサギのハートって。ぷるぷる震えるところが似てるって。


「あー、臆病なんだ」


 そう言われると、かちんときます。


「ごめん、ごめん。でもね、綺音にもそんな、ぷるぷるハートのところがあれば、もっと胸キュンは大幅に増えると思うんだよね」


 あなたが言っても詮無いことではないですか。


「そーだね。わかってはいるよ。今では失敗したかなぁと思うよ。もっと綺音の年齢を上げておいたほうがよかったかも。それか、美弦くんを主人公にすればよかったかな、と」


 えッ?


「あ、目をキラキラさせないで。いま、きみを主人公に物語を書く余裕、まったくもって無いんだから」


 えぇ?


「だから、キラキラしないでぇ」


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