第8話 きた! きたきた! ご応募が
猗綺子さん! きましたよ!
「えっ? どうしたの? いいダージリンでも手に入った?」
違います! 募集させていただいた、僕へのご質問が届いたんです!
「えっ、早! すごいね、美弦くん」
はい! 僕のファンでいらっしゃる、
陽野 ひまわり さまから。
「うわあ。感激です。ありがとうございます」
ありがとうございますっ!
「ご機嫌じゃん、美弦くん。この前、そんなテンションだったのって、あのダージリンのファーストフラッシュ、“マグノリア’’を注文してもらえたときだったよね」
そうです。
もう、嬉しすぎて駆け出しそうです。
「ここにいてくれないと困るぞ。
で、ご質問はっと……まあ、いろいろしてくださってるよ。ありがたいね。これ、2回に分けたほうがいいんじゃない? プロフィールと、海外での思い出」
そうですね。そうしましょう!
「じゃあ、今回は基本的プロフィールと嗜好についてね。まず、星座」
蟹座です。
「ほう。少し意外な気がするね」
そうですか? 僕、7月23日生まれなんです。誕生花は、薔薇です。
「おお、薔薇!」
ある伝説によると、この日の薔薇は紅白の薔薇だそうですよ。
「へえ。血液型は?」
AB型です。うち、全員がAB型なんですよ。
「まじで?」
まじです。
「綺音ちゃんと美弦くんが同じなのはわかるけど、集一さんと結架さんも同じ? うっそだぁ」
ほんとです。父方はAとBが混ざってますけど、母方は代々みんな殆どがABなんだそうです。あのひとも、そうですよ。
「おかしいな。そうだっけ?」
やだなぁ。忘れないで下さいよ。僕の家は皆、AB!
そう言ってたのは、誰あろう、猗綺子さんじゃないですか。
「いや、でも、ちょっと非現実的だなと思って」
まあ、血液型の話は本編に出てくる予定、ないですから、いいんじゃないですか?
「……そういうもんかな」
そういうもんですよ。
「……じゃ、いっかぁ」
そういえば、猗綺子さんもAB型ですよね。
「うん」
……楽しようとしてません?
「いやあ。そんなことは……ない、よ?」
本当かなぁ。
「さて、次! 好きな食べ物!」
僕、基本的にはなんでも好きですよ。
綺音みたいに好き嫌い激しくないです。小さいころから、ピーマンもカボチャもナスもニンジンも食べられます。
「全部、綺音の苦手な食材だね」
料理ってことなら、マンマの作るもの全部好きです。
「いや、美弦くんがマザコンだとは」
僕、マザコンですかね。
「初恋もマンマでしょ」
初恋はね。
「え? それって爆弾はつげ」
あ、でも、相馬の小母さんが作ってくれる料理も、全部好きですよ?
「誤魔化したね」
いえいえ。
料理に特段好きなものがないですが、お菓子なら好みが結構うるさいかもしれません。
「へー。たとえば?」
僕、メロンとスイカとバナナが嫌いなんです。だから、それを使ったお菓子は食べられません。
「お、嫌いって言葉、美弦くんから聞くとは思わなかったな」
本当に嫌いなんです。
あの、独特のぬめりとか、砂みたいなざらつきとか、味がダメです。
「小さい子って、バナナ好きなもんだけどな」
僕は昔からダメです。
綺音だって、昔はバナナ嫌いだったんですよ? なのに、いまは好きだっていうんです。裏切ったんですよ。
「ははは。相当嫌いだね、これは」
香りも苦手で……。
「わかった。美弦くんが風邪をひいても、フルーツバスケットは贈らないよ」
そうしてください。
「逆に、好きなお菓子ってあるのかな?」
そういわれても、メロンとスイカとバナナ以外なら、なんでも……あ。
「なにか、あった?」
あります!
「おお、何?」
マンマが作ってくれる、桃と薔薇のゼリーです!
「桃と薔薇のゼリー? また、凝ってるね」
はい。でも、作り方は簡単です。
ハーブのローズピンクを濃いお茶にして、砂糖とゼラチンを溶かして、缶詰の白桃を刻んだカップに流しいれて冷やして固まったら、薔薇のジャムをかけるんです。マンマと一緒に作ったことあるので、僕だけでも作れる簡単なレシピなんですよ。
「へー。味の配分はプリンみたいだね。ジャムがカラメルソースみたい」
そうですね。軽く混ぜて食べると美味しいです。砂糖だけじゃなくて、缶詰のシロップも少し入れるといいですよ。桃の香りも強くなります。
「あ、食べたくなってきた」
いまは時期じゃないので……5月まで待ってください。
「なんで?」
その薔薇のジャム、もうきらしてて。5月にしか販売されないんですよ。マンマが箱買いしてくれるんですけど、大体、このころくらいには食べきってます。
「別の薔薇のジャムじゃダメなの?」
そうですね。いいかもしれません。でも、薔薇のジャムっていっても、
「どこの?」
言っていいのかなぁ。
国内で、ネットでも買える、有名なお茶の専門店です。お茶に合う食材も販売しているので、人気があるんですよ。パンケーキミックスとか、いままで当たりでした。
「へえぇ」
結局、僕の大好物って、お茶なんですよね。
紅茶が一番好きですけど、
「なに、ぺちゃぱいって? ケンカ売ってる? 美弦くんが」
パイチャですぅっ! 白茶! 半発酵茶の一種です。
「半発酵。発酵が弱いってことかな」
そうです。中国茶で、茶葉が白っぽいので、白茶と呼びます。茶葉の芽に白い産毛が生えているからなんですよ。
ほかの中国茶のように、作る工程で揉まないので、茶葉がそのままの姿で、お湯を注ぐと綺麗に舞います。
香りも
近年では、インドやスリランカでも生産されているんですって。
「さすが、お茶のこととなると言葉が増えるね」
えへぇっ。
「まあ、中国茶とか言うけど、お茶自体が生まれたのは中国だからね。それがオランダの連合東インド会社によってオランダに持ちこまれ、イギリス人がインドにお茶の樹を発見したことで産地がヨーロッパの植民地にできていったからこそ、いまの紅茶の地位がある」
すごい。猗綺子さん、お勉強したんですね。
「うん。美弦くんにばかりカッコいいところ、とられたくないから」
イギリス人植物学者のロバート・ブルース少佐の発見ですね。
インドの、どの地方かわかります?
「えっとぉ」
アッサム地方です。
見つかったアッサム地方の樹は中国のものより高温多湿に強く、茶葉も大きくて、大量生産に適していたそうですよ。
「爆発的ヒットの理由か」
はい。ダージリン、ニルギリ、セイロンにも大規模な茶園が造られました。
「紅茶の銘柄だね」
基本的には産地で呼びますね。あとは農園の名前や、ブレンドの名前です。ダージリンは、収穫時期によって、ファーストフラッシュ・セカンドフラッシュ・オータムナルと分けられています。
「難しい」
僕が好きなのは、ダージリン・ファーストフラッシュのキャッスルトン・ムーンライト。これはキャッスルトン茶園の選り抜きです。もう、もう、とっても美味しい紅茶なんですよ。
ひまわりさんに、飲んでいただきたいなぁ。
「
はい。
ええと、ひまわりさんの お住まいは……。
「……わかるの!?」
次回につづく
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