第2話 恋愛小説コンテスト

 皆さま、こんばんは。

 美弦です。


 なんだか、お笑いの人のネタみたいですが、そうではありません。


 え?


 お笑いなんて見るのかって? 僕、好きですよ?

 このあいだなんて、お葬式のネタをやっているテレビ番組を見て、家族で笑いました。意外ですか? そんなに高尚なものばかりと接しているわけないんですよ? 僕らも人間ですから。あ、でも、マンマには突っ込まないでくださいね。似合わない世界に生きていますので。


 ところで。


 このエッセイ、宣伝にするって猗綺子さんが言ってましたけど。


 宣伝になるのかなぁ。

 イマイチ不安。


 『風花 ~舞い散るは きみへの想い~』は、恋愛小説コンテストのために生みだされました。

 つまり、このコンテストがなければ、僕も綺音も、影も形もなかったということで……。


「そんなことはないよ」


 あれ、猗綺子さん? 寝てなくていいんですか。


「夜はね。わりと元気」


 それじゃダメなのでは……。


「あはは。まあね。そうなの。

 とにかく、綺音と美弦は、だいぶ前から生まれてはいたんだよ」


 そうなんですか?


「そう。結架と集一は、私にとって長女と長男だから。可愛くて仕方ないわけ。まあ、君たちの親戚にあたる人物も、可愛いんだけど。でも、もう亡くなっているからね。君たちが生まれるのは、必然ともいえる」


 喪失感を埋めるためですか?


「それだけではないけど」


 でも、あのひとは、マンマにとってあんまり……。


「それは秘密。あのひとには、あのひとなりの愛があったんだよ」


 その本編だけど。

 公開しないんですか?

 気になってる人、ちらほらはいると思いますよ。


「う~ん。公開したい気持ちはあるんだけど……」


 義理恩義に硬いひとですからね、なんだかんだいって。


「うん。既に結架と集一をカクヨムで発表しちゃってるのも、問題かなと思っているくらいだから」


 でも、今更下げるんですか?


「それは、しない。私の信条に反する。一度書いて出した以上、誰を傷つけようと、無下にしようと、責任の所在を消して終わりになんてできないから」


 妙なところで熱いんですね。


「そうかも。

 まあ……恋愛小説コンテストに一番合いそうなのが、結架と集一の本編ではあるんだけどね……。未完成だし……」


 いったい、いつから書いてるんですか。


「一度、完成させてはいるんだけどね。でも、納得いかないから書きなおしてる。そしたら新キャラ出てきちゃうし、当初の予定していたキャラクターが消えちゃうし、いろいろ変革だよ。やっぱ、ただの凡才の10代が書いたものなんて、そんなものだね。今見ても、思考や展開が浅はかで笑っちゃうもん。いまはなき、昼ドラ的展開とか」


 ああ、ご都合主義的な?


「まあ、あるていど、私の作品なんて、結構、ご都合主義だけどね。でも、自分なりにきちんとした理由があっての展開であってほしいじゃない。偶然とか、それに見せかけられた謀略とかじゃなくて」


 結構、理想は高いんですよね。


「そうかも。美弦くんだって、理想は高いでしょう?」


 母があれで、父がこれですからね。


「で、姉がそれだもんね」


 それで、猗綺子さんのなかでは、どうなんですか?

 僕って、あの転校生さんに勝てるんですか。


「おっと。まだ連載では登場してもいない人に、絡むね」


 姉の将来がかかってますから。


「綺音には、これから恋の苦しみをたくさん味わってもらう予定。美弦にもね」


 僕、誰にも恋なんてしてませんよ?


「だから。これから、てことよ」


 えええ?

 僕、まだ中学生にもなっていませんよ。


「恋に年齢なんて、関係ないのよ、美弦くん」


 でも、僕、あのひとみたいに報われない恋は厭ですよ。


「うっ。そう言うか」


 僕って、結構、冷静なんです。だから、猗綺子さんの考えている方向には、たぶん、進みませんよ。残念ですけど。


「ちーっ。しかたないなぁ。また考えないといけないことが増えた」


 僕の設定を先送りにするからですよ。しかも、こんなエッセイに引きずり出して。


「作品分析のためにも、必要だと思ってね」


 後先考えずに、いけませんね。

 大体、あなたってひとは……。

 ……。

 ……。

 ……。


 前回に引き続き、お説教が止まらないので、ひとまずここまで。


 失礼しました。

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