La liberatrice 『風花 ~舞い散るは きみへの想い~』美弦と猗綺子の対話集
汐凪 霖 (しおなぎ ながめ)
第1話 La liberatrice
皆さま、はじめまして。
僕の名前は、
現在、連載中の『風花 ~舞い散るは きみへの想い~』のヒロイン、
『愛の源泉 La Catena』と『愛の変遷 Il Ceppi』の
皆さまには、両親と姉が大変お世話になっています。ありがとうございます。
さて、僕は、このエッセイの進行と案内役を仰せつかったのですが。
まずは、このエッセイの成立からお話ししなければなりませんね。
実は、いま、汐凪猗綺子さんってば、ぐろぐろにけろんけろんなんです。あ、すみません。汐凪家の言葉ではいけませんね。つまり、精神不良に陥って、小説の進み具合も悪い状態なんです。
原因はいろいろあるんですけど、まあ、それはそれとして。
たぶん、この一か月以上、『風花』にかかりきりだったのも、ヘンにプレッシャーになっているみたいだと思うんです。かといって、他の作品を気晴らしに練るほどの時間も体力もない。そこで仰せつかったのが、僕、美弦によるエッセイ……これ、エッセイなんでしょうか?
とりあえず、ややこしいので、エッセイということで。
僕が進行と案内役を仰せつかりました。
仕方ないですよね。パーパはマンマ以外の女性に冷たいし、マンマは心配そうにおろおろしてるし、綺音は興味ないみたいだし、奏も何かと忙しそうだし。僕が適任だろうってことなんです。
そんなわけで、これからしばらく宜しくお願いいたします。
「すみません~私の気分転換につきあってもらって~」
あ、でてきちゃった。さだ……じゃない、猗綺子さんだ。
「でも、ありがたいですぅ。美弦くんって、いまいち掴みどころのない人物なので、まさか引き受けてくれるとは思わなかったですぅ」
え、拒否権ってあったんですか。
なんか、黒ずくめのお姉さんたちがわらわら来て、任命書を渡してこられたので、断れなくて。
「ふっふっふ。それは、アキコーズのお姉さま方です。私の代わりに、脳内の人物たちを統合している、偉い偉い方々なのですよ」
え、なんか多重人格者っぽい……。
「そりゃあ、そうです。いろんな人物を生みだそうとしていますから。書いているときの人物の考え方や癖なんかが乗り移ることもありますよ」
怖いなあ。
僕、これでも
あまり過激なのはいけませんよ。僕、小学生ですからね。
「解ってます。きみの母上に叱られるようなことは致しません」
そうですね。マンマって、滅多に怒ることないけど、僕たちのことでは、すっごく怖いから。
「そうそう。君たちの事件のときには、私、首絞められそうになったもん。怖かったわ~」
そんなネタ晴らし的なこと言っていいんですか?
「宣伝だからね。いいさ~きっと~」
ええっ。
気分転換ってきいてましたよ? このエッセイ、宣伝なんですか?
「うん、両方かな。一番は気分転換だけど、ただそれだけのために書くんじゃ勿体ないよね、時間が。だから、宣伝にもなればと思ってるよ。私の敬愛する、とある先生のご姿勢にならってね」
僕って、アルバイト?
「ごめんね、完全なるボランティア」
ええっ。
「いいじゃないですか。君んちはお金持ちなんだから。たまには無償の労働に励んでごらんなさい。きっと何かが見えるよ」
……それはいいですけど、でも、なんで『La liberatrice』なんですか? 僕、女性じゃありませんよ?
「女性より美人じゃありませんか。いいじゃありませんか」
『Il liberatore』じゃダメなんですか?
「解放者、または、救済者。それって、君のことだと思う?」
あ、意地悪だなぁ。
僕じゃないんですね。
「さあ、どうかなぁ?」
女性なんですか?
「そんな、このひとです! って言って、なんかいいことある?」
……すっごい計算高い質問ですね。
「ははははは」
本当に絶不調なんですか? すごい不遜な態度ですよ。反省してください。
「うん、ごめんなさい。でも不調なのは本当だよ。こういうときはね、いろいろ誤魔化さないと、自分を傷つけかねないから」
それはいけません。猗綺子さんに何かあったら、僕たちなんて、きれいさっぱり消えてしまうんですから。
「それは忍びないよね……寂しいよね」
そう思うなら、もっとしっかりしてくださいね?
だいたい、あなたというひとは……
……。
……。
……。
お説教が続いているので、今回は、このへんで。
では、失礼いたします。
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