最終話 - 心はいつも… -
祐二が死んで半年が経った。私はずっと務めていた会社を辞め、今は美希の友人の元でウエディング・プランナーのアシスタントをしている。
最初は辛かった仕事も、美希をはじめとする多くの友人に助けられ、何より祐二の手紙に助けられていた。遠くに旅立っても、私のことを見ているといった。私も負けていられない。だから人の幸せを一番近くに感じられるこの仕事を選んだ。
「遥!」
「美希!久しぶりだね」
「聞いてるよ。がんばってるんだってね」
あれから美希は、時間があれば私に会いに来てくれた。
私が一人じゃないと教えてくれたのは、美希の存在があったから。
悟くんからも、よく連絡をもらった。
悟くんは、あのときのことを、あの手紙の内容を聞いたりはしなかった。あれは、私のだからって。
普段ふざけている印象があるけど、やっぱり祐二の親友だったんだなと思った。辛いのはみんな一緒だから。
「仕事どう?」
「うん。毎日大変だけど、充実してるよ」
「そっか」
「うん。ありがと」
美希や悟くん。いろんな人の助けをもらって、今私は立っている。
だから、あなたにもちゃんと伝えなきゃいけない。
私は祐二の実家を訪れた。
祐二の両親は、祐二が死んでもなお、お二人を気にする私に申し訳なく思っているみたいだけど、私がそうしたいから。だから祐二のお墓参りも、よく一緒に行ったりする。
「遥ちゃん、ありがとう」
祐二のお母さんは、そういっていつも先に帰って、私に祐二との時間をくれる。
「……祐二、久しぶり」
高台にある藤島家のお墓。ふと見上げると、そこにはあの頃と変わらない、澄んだ青空が広がっていた。
「……私ね、やっと前を向くことができた気がする。あなたがいなくなって、すべてを失った気がして、自分を傷つけようとまでした。でも、あなたはそんなこと望んではいなかった。もう会えなくても、あなたはずっと私のことを見ているんでしょ?だったら、やっぱりみっともないところは見せたくないじゃない?だから…、大丈夫だよ、祐二…」
なんだか祐二が笑いかけてくれているような、そんな青空だった。
『遥、よくがんばったな。もう、会って声を聞けないのは寂しいけど、俺はずっと見てるから。君の姿を、君の欠片をずっと見守ってるから…』
私は歩きだした。止まっていた時間を戻すように。
祐二との記憶を忘れるためじゃなく、思い出にするために。
でも、それでも私はあなたを想い続ける。きっといつまでも、想い続ける。
『うん。ずっと見守ってる』
それが私の、
『それが俺の』
「『愛しい人を想う気持ちの強さ』」
私はこの空の下で、今日もまた生きていく。
Fin.
心はいつも… 穂月 遊 @hozuki-yu
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