おまけ
3年後。
「忘れ物はない?」
「大丈夫だよ」
「護身用のナイフと銃は持った?」
「持ってねぇよ。持ってたら捕まるわ」
「でもトモも企業戦士なんだし」
「武装するほど戦士じゃないし。不死身だから大丈夫だって」
「本当に忘れ物ない?」
「うん、いつものヤツ以外はね」
すっかり日課になった、いってらっしゃいのキスも、今ではアヤさんも慣れたのか照れもほとんどなくなったようだ。
「ラン! 早く来ないとパパが行っちゃうわよ!」
「はぁーい‼」
子ども番組の童謡がテレビで流れてるリビングから、可愛い返事とともに、愛娘がとたとたと走ってきた。俺は鞄を置いて、娘のタックルを受け止め、そのまま抱きかかえた。
「ランー、パパにいってらっしゃいのチューは?」
小さくすぼめられた口が俺の頬に優しく触れる。娘からのキスもここ最近の新しい朝の日課になった。よっし、これで今日も一日頑張れる。
「じゃ、いってきます」
「行ってらっしゃい」
「パパ、いってぇらっしゃーい‼」
一方、俺はというと不死身の体を持て余しつつ相変わらずサラリーマンを続けている。勘解由小路も俺の部下のままなんだが――
「先輩、ランチご一緒してもいいですか?」
「おう、前に座れよ。勘解由小路」
「紫苑寺です。もう結婚して一カ月なんですよ? いい加減慣れてください」
「すまんすまん。ところでアイツは元気にしてんのか?」
「はい、私の心の中で……」
「自分の旦那を勝手に殺すな」
なんと勘解由小路は紫苑寺と結婚し、紫苑寺小百合子になった。なんでも、勘解由小路が紫苑寺を何かしらの弱みで
ふと、スーツのポケットの中でスマホが震え出した。取り出してみると、アヤさんからの着信だった。珍しいこともあるもんだなと思いつつ、電話に出た。
「もしもし、どうしたの?」
「さっき幼稚園から電話があって、ランが転んで、膝を擦りむいたらしいのよ」
「え!? 大丈夫なの!?」
「大丈夫。大丈夫なんだけど、先生たちが応急処置をしようとしたら、膝の傷がもう治ってたらしくて」
「それって……」
〈完〉
今日も俺は嫁にイチコロ クラタムロヤ @daradara
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