第五章   その下にささやかな意志を

 じんわりと体中を巡っていた心地よい温度の熱が急に途絶えたのを感じ取ると、ユウトはその瞼をゆっくりと開いた。彼は白騎士の大きな手のひらが気に入ってしまったらしく、それが離れる瞬間には若干の口惜しささえ感じた。ユウトは唇を舌で舐め、話す準備を完了させる。「何か見えましたか?」口を突いて出た敬語にユウトは驚く。頭部を委ねるというのは、きっとそれだけの信頼関係がなければできないことなのだろう、と彼は考える。そこにはそれを裏付けるだけの確かな安心感があった。例えばクリスと会話するときのような。そのゆとりが一体、どの隙間から発生したものなのかはユウトには理解することができなかった。

 白騎士はユウトの頭から離した右手をそのまま自分の頭へと持って行った。しかしこれはどうしようか、と彼は思考を巡らせる。「ああ、記憶は見えたよ」今までとは別の種類の混乱の中、彼はそれだけを言葉にした。

「キャリア、なんですか。俺」ユウトは俯く。感覚としてではあるが、強く明確な答えが彼の中にあったためである。

 その話か、と白騎士は頭を抱えたまま思った。「ああ、それはもう気にしなくていい」と白騎士は言う。ユウトの全ての記憶を閲覧し終えた今、ユウトがキャリアであるかそうでないかというのは極々小さな問題だった。正確に言えば、その問題は記憶の閲覧によって発生した新たな問題の中に内包されているため、わざわざ考慮に入れる必要がなくなってしまった、ということなのだ。しかし白騎士はそれをはっきりと言葉にしようとはしなかった。記憶を覗くと同時に枷を与えられてしまったためである。あの美しいサイキッカーが自分と同じ種類の枷を与えられていることも、恐らく口にしてはいけないことなのだろう、と彼は考える。

「ちょっと待てよ。俺はキャリアかどうかの確認のためにあんたに記憶を譲ったんだ。何を見たのかは知らないけど、せめてそれだけは教えてくれ」ユウトの声は震えていた。「俺はあれにはなりたくないんだ」

 白騎士は鎧の下でその目を細める。「その恐怖に理由はあるのか」

「理由」ユウトは再び俯く。「気持ち悪いんだ。吐き気がする」

 ユウトのその直感的な感想に白騎士は満足する。彼が少年の口から聞きたかったのは、まさしくそういった先入観のみに構成された言葉だった。つまりはそれが真実なのだろう、と白騎士は思う。少年の記憶の中に見たものと同じ種類のものだ。「お前はキャリアじゃない。アンチ魔法エネルギーはきっと、弩級キャリアとの接触の際に付着したものだったのだろう」そう話しながら、白騎士は頭の中で物事の順序を整理する。ひとつでも順番を間違えてはいけない。絶望の沼には少しずつ沈んでいかなければならないのだ。そうしなければ、圧力の急激な変化によってその身を破裂させることとなる。彼は魔法エネルギーの接近を感じ取る。ユウトの遠く背後から、例のようにして彼女らが近づいてきているのがわかった。一体、エルフとサイキッカーは何を考えているのだろうか。

「そうか」ユウトはふやけたような微笑みを浮かべる。「そうか、よかった」

「ならば次はどうする」白騎士は問う。「魔王を殺しに行くのか」

 ユウトの脳の回路が安心によって元の状態へと戻る。今の彼は至って冷静だ。必要なことは理解できている。その他のことに目を瞑ることができたためである。「ええ」彼は答える。「殺しますよ。悪い人なんで」

 少年の純粋な返答に再び白騎士は満足する。少年が言葉を発する度に、塗り替えられた新しい世界がおもしろいほどに強靭なものになっていった。しかしそれらの事象が映し出す未来においては、彼にはクララと同様の仕事が課せられてしまうため、彼はそれを出来ることならば避けて通りたいと考えていた。「それでいい。そうでなくてはおかしいのだ」と白騎士は言う。しかしルールがほぼ決定されてしまったのは確かだ。落とし穴だらけの闇の道に、少なくとも強い光が差したのだ。先程までより格段に身動きが取りやすい。後は覚悟の問題だ。

 ユウトは軽く腰を落とし、かろうじて未だ右手の中にあったタクトを強く握り直す。まるで今始めて、白騎士が自分と対立する存在だと気がついたかのように。「戦いますか?」彼はそう言って目を細める。

「君とは戦わない」そう言って白騎士は仕事の遂行手順について考える。彼は自分の判断がどうあっても正解に辿り着くことを理解していた。ユウトの記憶を覗いた際に、彼が自分の存在をも定義し直していたためである。白騎士はまずユウトの存在の危険性について考える。インフィニティの魔力を用いれば当然、奇跡の発動までは難なくこなしてくるだろう。そうなれば今のこのルール上、少年の処理をここで保留した場合において、ディアブロ卿の命が失われない未来はあり得るのだろうか。彼は脳内であらゆる未来を思い描き、そして結論を出す。それはあり得ない、と。少年の自由によりディアブロ卿の落命はきっと必然となるだろう。白騎士はそこで行動の保留という選択肢を排除する。彼は次に、与えられた仕事について考える。何かを成すことが決定したとして、それがその仕事でなければならない道理はない。目的を達成することができるのならば、恐らくほかの手段でも問題はないはずなのだ。しかし白騎士は思考を研ぎ澄ませようとはしない。そちらの問題は、少年の処理の件よりも遥かに闇がこちら側に侵食して来てしまっているためである。研ぎ澄ませようにも、そもそもそこには思考の余地がないのだ。与えられたその仕事が一筋の光として、ただ一つの答えとしてそこにあるだけだった。白騎士は突如現れた大きな流れを前に足掻くことの無意味さを悟る。これは責任である。初めから一貫して単純な二者択一なのだ。責任を果たすのか、このまま逃げ続けるのかのどちらかである。彼は自分の判断がどうあっても正解に辿り着くことを理解していた。白騎士は目線をユウトから外し、エルフたちの接近を遠くの空に見る。

 ユウトは白騎士の兜の僅かな動きを見逃さなかった。「何を考えてるんです」白騎士の醸し出す酷く重厚な沈黙に、ユウトは違和感と恐怖を覚える。一体彼は俺の中に何を見たのだろう。ユウトは白騎士の兜の目線の先を見る。未だ小さな三つの影をその澄んだ青空に認めることができた。

 白騎士は横目でユウトの表情を一度確認してから、また接近する彼女らの方を睨みつけた。紅くならない程度に落ちた太陽の弱い光を味わいながら、彼は鎧の下で言葉を紡ぎ出す。「旅は終わりだ」と。

「え?」ユウトは白騎士が何を言ったのかを聞き取ることができなかった。

 白騎士は右手に内蔵されていたタクトを体から分離させると、それをそのまま魔法によって長槍へと変化させた。握りしめる右手には力が入り過ぎてしまっているような気がした。しかし深層心理の変化まで待っている余裕などない。彼は二度ほど槍を握り直すと、二三歩の助走の後にそれを思い切り投擲した。槍は膨大な量の魔法エネルギーの付与により、彼の手を離れた瞬間に音速を超えるスピードにまで加速する。槍はその致死的なスピードを落とすことなく、青空のその向こうを目掛けて飛んでいった。そこに浮かぶ三つの影のうちの、あるひとつを通過して。

「おいなにしたんだよ」その声には芯が認められない。白騎士の不吉な行動にユウトは焦る。体の奥からじんわりとこみ上げてくるような、吐き気を催すほどの焦燥である。あちらの空を見れば、影の数が二つに減っているようだった。嫌な予感がした。彼は予測しうる現実を予感として認識の前で保留させた。それは大きな絶望を前に心の安寧を繋ぐための反射的な生理現象だった。しかし吐き気だけは本当だった。心とは違い、体は現実から遠ざけることはできない。

「ブレスレットを見てみろ」白騎士はそう言いながら右手を宙に伸ばし、飛ばした槍を異空間から回収した。彼はそれを見つめ、そして考える。この槍とて、きっとここではどこにも行くことはできないのだ、と。

 ユウトは左腕に巻かれた例のブレスレットの方に視線をやる。それは心を守るための現実逃避には十分過ぎるひと呼吸だった。彼は息を飲む。「白だ」彼の知らぬ間に、ブレスレットには大きなビーズがひとつ追加されていた。それはとても濃度の高い、酷く頑なな白だった。これでブレスレットには、黒、緑、青、そして白の四色のビーズが戻ったこととなる。未だ空いている箇所はあとひとつ。しかしこの白は一体、「いつの間に」

「たった今だろう」既に白騎士はそこに摩擦を顕在化させる覚悟を決めていた。「宿主の男を殺したからな」彼は槍をタクトの形に戻してから、それをすぐに異空間へと収納した。

「なんで」まるで全身の筋肉が麻痺しているようだった。白騎士は男と言った。「本当に?」ユウトの両の瞳は限界まで見開かれる。しかしその焦点はこの世界のどこにも合ってはいなかった。

「ビーズの回収がどうしても必要だった」白騎士は答える。

「今の槍」吐き気と軽度の酸欠があった。クリスの体に槍が強引に抉り込まれる様を想像すると、吐き気は更に増長され、口の中で少しの胃酸の臭いがした。彼は口元を一度押さえてから、現実と向き合う覚悟を決める。「殺したのか。クリスさんを」

 白騎士はユウトの様子を細かに確認し、彼のショックのピンの場所を推測する。「きっと痛みは感じていないよ。一瞬のうちに体の組織を分解させたから」

「そうなのか」その事実を受け、ユウトの吐き気は少し和らぐ。この感情はしっかりと怒りに昇華させてやるべきものではないのか、と彼は考える。しかし不思議とそれは上手くいかなかった。意思と本能の間で何かが緩衝材のようにして作用しているようだった。怒りが表層にまで浮かび上がらない。クリスの死の事実から、それに相応するだけの情念が湧き上がらないのだ。どうやら異常の原因はその視点にあるらしかった。意識がクリスの死へと真摯に向かない。彼は自分自身が他の何かを考えていることに気づいていた。不思議な感覚だった。まるで自分が自分以上の存在になってしまったようだった。

「癇癪を起こさないのか」白騎士はインフィニティの暴走という事態の発生をかなり大きな確率として視野に入れていた。しかし彼の予想に反し、クリスの死に対してユウトは酷く冷静だった。白のビーズの回収のせいだろうか、と彼は考える。そして彼のそういったささやかな予想もまた、真実の片鱗を見るに等しいものとなるのだ。

 ユウトは自分の両手をじっと見つめる。しかしその視界は未だ焦点が完全には合ってはおらず、ぼやけていた。「なんだか変なんだ。俺が俺じゃなくなっていくような、そんな気がする」

「記憶を回収しているのだ。純粋なお前が塗り潰されてしまうのは当然のこと」

「違う。それだけじゃない」ユウトは嗚咽交じりに、その曖昧な感覚をそのまま言葉へと変換しようと努める。「なんだかこう、いろいろなものが見えるような気がするんだ。嫌な音や、変な臭いもする。まるで体だけが別のところにあるみたいだ。気持ちが悪い。ぬめぬめする」

 白騎士は目を細める。なるほど、これは拒否反応だ。「あまりいい記憶ではないようだが」と白騎士は言う。「それでもなお、欲するのか」その問いに意味はなかった。ユウトがそれになんと答えようが、白騎士の仕事が変わることはないのだから。しかしそれでも彼は聞かずにはいられなかった。闇の味に魅入られてしまったのかもしれない、と彼は思った。しかしそれはあり得ない考えだった。

 ユウトは右手の親指と中指で頭の両側のこめかみ辺りを力強く押し、混乱する脳を一度きりきりと締め付けてやった。そして記憶そのものについて考えてみた。この場合の記憶とは即ち、失われ、現在彼の手元にない記憶のことである。「要るのか、そんなもの」口に出したその言葉の響きを彼の耳は憶えていた。俺の記憶の回収を否定したのは誰だろう、と彼は考える。マリーだ。記憶の回収を始めようとしたときに。「きっとマリーは知ってたんだ」俺の記憶がろくでもないものだと。

「ユウトー! 大丈夫―?」

 遠くから聞き慣れた声がする。ユウトは頭から手を離し、そちらを見る。空にはマリーとテレサがいた。まだかなり遠くのはずなのに、いつもよりよく見えるような気がした。精神が張り詰めていた。砂浜の上をクララが滑っていた。しかしそちらもまだ十分に遠い。不思議な感覚だった。すべてが確かに見えていた。下手に転べば、それ以上のものまでも見えてしまいそうだった。「これ以上は嫌だ。そっちは駄目だ」ユウトは瞼と手のひらで急いで視界を塞ぐ。彼はそこで初めて、それらの光景が目から見えているものではないことを知る。「どういうことだよ。これじゃあまるで」

「それ以上を拒むのならば、俺はやはりお前を殺すことになる」白騎士は言う。「俺にはお前の失われた記憶を引き継ぐ資格がある」

「こんな気持ちの悪い記憶を欲しいっていうのか?」

「大切な人を置いてきてしまった。お前も緑の記憶で見ただろう」

「緑の記憶だと」白騎士の言葉はユウトの耳に嫌な響きとして届いた。緑の記憶。つまりはジャンヌから回収した記憶のことだろうと彼は推測する。しかしそれは。「それは誰かに殴られる記憶のはずだぞ」

「知っている」白騎士は深く息をつく。「それだけ彼女が世界に絶望を見ていたということだろうな」瞳にじわりと涙が浮かぶ。彼は母の顔を思い出していた。いつ壊れてしまうかもわからない、その危うく儚い面影を。

「何言ってんだ。それじゃあまるで」ユウトは右手を首筋に這わせる。緑の記憶がフラッシュバックを起こす。黒髪の向こうに女性の面影が揺れる。嫌な臭いがする。嫌な音もする。そしてそれらが彼の吐き気を誘発させる。「なんで」

 ユウトの様子を見て、白騎士は鎧の下で歯を食いしばる。彼の感情は既に悲しみから幾分か逸れ、怒りに近い情念へと変化してしまっていた。「もう時間はない」彼はその情念をでき得る限りにおいて抑える。「ブレスレットを寄越せ。お前はずっと、この楽園で暮らしていればいいのだ」彼はユウトの方へと手を伸ばした。

「妖精ビィイイイイイイイイムッ!」

 それはマリーの叫び声だった。彼女の指先から放たれるその光線は、白騎士のいる座標へと向かってピンポイントで伸びる。白騎士はそれが到達する前にタクトを異空間から取り出し、瞬間移動の魔法を発動させ、ユウトの隣からその身を避難させていた。太陽のような色をしたその光線は、ユウトのすぐ目の前をまるで虹のようにゆらゆらと流れていた。ユウトはその不思議な光から伝わる温もりをじんわりと感じる。あの時と同じだ、とユウトは思った。なんて温かい光なのだろう。

「ユウトはやらせないよ」とマリーは言う。光はやがて消え、代わりにユウトの視界には三人の少女の雄々しい背中が映った。ふと見ると、彼のすぐ足元でジャンヌが寝息を立てているようだった。これは一体、どの少女による施しなのだろうか。まるで魔法みたいだ、とユウトは思った。

「あんたに選択権はないよ。コアはあくまでユウトなんだ」マリーは右手を腰に当て、左手の人差し指で白騎士の方を指差した。

「時間はもうないぞ」白騎士はタクトで海の向こうを指し示す。「キャリアがここを喰い始めている。目覚める必要があるのだ。分かっているんだろう、サイキッカー」

「ええ」クララはすぐに答えを返した。「しかしそれでもマリーさんの言った通り、コアはあくまでユウトなのです。鎧が一人歩きなど、そんなもの幽霊と変わりません。目覚める意味がありませんわ」

「イドの気まぐれを待てと言うのか?」

「イドから産まれただけ。ユウトはあくまでコアですよ」

「まるでゲームのバグのよう」テレサは水平線を眺めていた。そこにはじりじりと複雑な色をしたノイズのようなものが走っており、更に時間の経過に従ってその範囲を拡大しているように見えた。「儚いものね」と彼女は言う。「この先は、死、なのかしら」

「目覚めですよ」クララは声のトーンを落とす。彼女は言葉を必死に探したが、それらのすべてが慰めにしかならないことに気がついた。「痛みは、ありませんから」

「そう」テレサは柔らかく微笑む。「それは結構なことね」

 ユウトは記憶を手に入れた順番と逆に辿り、この世界の意味を読み取る。逃げているだけでは事態は好転しないと悟ったためである。クリスの死。テレサの仮想空間への依存。ジャンヌの母とのすれ違い。そしてクララは、ばにらと超新星爆発だ。「俺はばにらの存在を否定した」ならばまさか、超新星爆発も?

「そうですよ、ユウト」クララはそう言ってからユウトの方へと振り返り、彼の頬を左手で優しく撫でてやった。彼女の瞳が低い陽光に照らされ、艶めかしく輝いていた。「あなたは既に答えを私に示してくれていますね。今からあなたはそれを実行に移すのです」

 頬を伝う彼女の手に熱はなかった。程なくして、その手の感触すらもわからなくなっていった。そのことにユウトは酷く怯んだ。しかしかき集めた記憶が皆正しいものだとするならば、それもまた当然のことなのかもしれなかった。「否定しろって言うんですか」彼はクララの真っ直ぐな瞳から目を逸らす。頬が汗でじわりと湿った。「ばにらとは規模が違い過ぎるでしょう」

「規模は違えど」そこで言葉を区切ると、クララはユウトの両の頬をなぞり、彼の視線がこちらへと向けられるのを待った。「どちらも一要素であることに変わりはありませんわ」

「無理強いはしないでよクララちゃん」マリーは白騎士を見据えたままに言う。「私は素直なユウトが一番好きなんだから」

「素直なだけでは生きられませんよ。男の子ですもの。そのための騎士さんでしょう?」クララは優しく笑う。両手は彼の頬から離さなかった。

 マリーは威圧的に白騎士を指差す。「こいつなんかいなくても生きられるよ。ユウトは元々強いんだ。それは私が一番よく知ってる」

「その強さのほとんどが、その騎士さんによるものなのですよ」

「違うよ。こいつのせいなんだ」マリーはぎりぎりと歯を軋ませる。その瞳には僅かに涙が滲んだ。「こんな奴がいたから、ユウトが悲しみを覚えてしまったのに」マリーは左手を僅かに揺らし、白騎士の足元から二メートルほどの細い氷柱を八本発生させる。それらはそれぞれ致死的な鋭さと成長スピードを兼ね備えていたが、白騎士はマリーからの魔法エネルギーの出力を察知した時点でタクトを異空間から取り出し、瞬間移動の魔法により自らの座標を変更していたために、彼はそれらに体を串刺しにされることはなかった。そして同じタイミングでマリーは続けて、瞬間移動の魔法を発動していた。しかし白騎士の使い方とは違い、彼女はそれを自分の体ではなくユウトのポケットの中にあるタクトに適用させていた。それによって今、彼のタクトは彼女の左手の中にあった。

「お前まさか、赤の?」白騎士は疑惑の中、不自然に増大するマリーの魔力から予測しうる自らの身の危険を鑑み、タクトを大剣の形へと変形させ、インフィニティの魔力をアイドリングさせていた。結果、その対応は正解だった。瞬間、マリーはタクトを槍の形に変形させ、鎧に包まれた白騎士の体を貫かんと、魔力の全開放による突進を始めたためである。数々の死線の中で鍛え上げられていた白騎士の感覚は、死を背にしたその一瞬において針のように研ぎ澄まされた。アイドリングさせていた無尽蔵の魔法エネルギーのそのすべてを、彼はタクトの一振りによって、急接近する彼女の槍の先に集中させたのだ。それによって槍と白騎士との距離がそれ以上接近することはなくなった。しかしマリーは止まらなかった。彼女の魔力の開放は主に高速飛行のためのもの。彼女は白騎士の作った魔法の盾に槍を接触させたまま、白騎士自身をも連れ、砂浜を超え、やがて海の上を高速で飛行し始める。音速を超える移動物体の通過により、海からは飛沫が上がり、地上に残ったユウトたちの体を濡らしていった。

 クララはユウトの頬から手を離すと、身を翻し、海の方を眺める。彼女の白いワンピースは、不思議と水に濡れてはいなかった。ばにらがサイキックによって彼女の身を守護したためである。「まあ、元気ですこと」彼女の視線の先、海の上では一秒ごとに新しい天変地異が発生しているようだった。その先にある水平線には依然ノイズの存在を認めることができる。クララはそれだけ確認すると、再びユウトの方を向いた。「それでは、騎士さんがマリーさんを喰い止めてくれている間に、こちらは開眼の準備を始めましょうか」彼女はそう言って、母のような微笑みをユウトに見せた。


「ええ、今厄介なのは、騎士さんではなくマリーさんの方です」とクララはユウトの疑問に答える。「あの人は何も知らないですから」

 その返答でユウトの疑問は解消されず、逆にその結び目は更に複雑なものとなった。「何も知らないなんてことはないでしょう」そう言って彼は一度、海の上で巻き起こる天変地異の光を見る。「俺はあいつに導かれてここまで来たんです。記憶のことや、接触のことだって」彼は目を伏せる。「記憶は十分に戻りました。だからわかりますよ。クララさんと白騎士に、俺は選択権を振り分けたんだって」

「正しい認識です」とクララは言う。「楽園が発生した瞬間に、あなたはあなた自身の力を私と彼に分け与えました。私を案内役、彼を超自我の御子とするために」

「超自我の御子?」

「コアとしての純粋なあなたを確立させるためです。新規に紡がれたあなたの記憶はスルースから始まっていますね?」

 ユウトは思い出す。ワイズの森の中でマリーに目覚めを促され、やがてクリスに拾われたあの日のことを。「ええ、間違いないです」

「そのスルースの王フィッツジェラルドが、超自我の御子の対となる存在であるイドの暴君に当たるというわけなのですが」クララはそこで言葉を区切る。「あなたはフィッツジェラルドには力を与えなかったのです。なぜだかわかりますか?」

 ユウトはフィッツジェラルドから突然に届いた薔薇色の命令状を思い出す。あれもまた、一つの力の形ではないのか。「王という地位は力じゃないんですか?」

「とてもいい目をしていますね」クララはユウトの真っ直ぐな眼差しに微笑みを返す。「しかしそういった間接的な力をも含め、あなたは彼に与えていないのですよ?」

「そうなんですか?」ユウトは会話の行き先を見失う。

「ええ、だってフィッツジェラルドはあなた自身なのですから」彼女はユウトの顔に浮かぶ困惑を掬い取って、それをひと口味わった。「イドの暴君。それはつまり本能」と彼女は言う。「それをあなたは、運命そのものとしたのですよ」

「運命」それがフィッツジェラルドの命令だとしたら。「それならディアブロの殺害には、いったい何の意味が」

「均衡の崩壊ですよ」とクララは言う。「ディアブロ卿の命がフィッツジェラルドの手の者によって失われれば、リベルダートとプラウドによる報復は必至でしょう?」彼女はそこで言葉を区切り、海の方を見る。「スルースにはあなた、プラウドにはあの騎士さんがいます。インフィニティ同士の戦いに際限などはありませんから、恐らく楽園が滅びるまでそれは行われたでしょうね」彼女は振り返り、再びユウトの目を見つめる。「楽園の崩壊はあなたの崩壊です。あなたがこの楽園を作ったときに同時に敷いた運命が、あなたの持つ死の本能そのものだったということです」

「生の本能は?」テレサは顎に手を添え、彼らの会話に割り込む。「イドなのだから、死の本能だけではなく、生の本能もそこになければおかしいわ。そちらのポジティブなエネルギーは、この楽園にはないのかしら」

「良い知識を貰っていますね」クララはテレサの方を見る。「でも生憎そちらの扉は鍵が掛けられてしまっていて、開かないのです」

「開かない? それならユウトは、つまりは向こうのユウトは、死の本能のみでその命を繋いでいたということになるわ。そんなことがありえるのかしら」

「たとえ生の本能を見失っていたとしても、死の本能が暴走しない限りにおいては命を繋ぐことはできますよ。人の体にはセーフティがありますからね」

「痛み」テレサは呟く。「もしかして」

「母さんなんでしょう?」ユウトの覚悟は時間の経過とともにその強度を上げていっていた。記憶の靄が徐々に晴れていっている証拠である。もうそれが自分のものだと彼ははっきりと理解していた。少なくとも逃げ場を作るだけのゆとりはない。進むにしろ逃げるにしろ、最早正面にしか道はないようだった。「母さんが俺を殺したんですよね」

「そこに愛は見えますか?」とクララは尋ねる。

「緑の、ジャンヌの記憶は伊達ではありません」ユウトは歯を強く噛み締める。自分が情けなくて仕方がなかった。しかし涙は出なかった。それが彼という人間の証明だった。「これだけでかく育っておいて、俺はそのセーフティすら母さんの肩車なしには越えることができなかった。そういうことでしょう?」

「ええ」クララは目を伏せる。「あなたが次にすべきことは、わかりますか?」

 ユウトは考える。より深く、より誠実に。「もしも生き返ることができるのなら、俺は母さんを幸せにしなければいけない、のだと思います。白の記憶は多分、父さんの死のことだと思うので」白の記憶そのものには未だ靄がかかっていた。しかし彼にはその確信があった。手に入れた四つの記憶がそれぞれに干渉し合い、あらゆる事柄を暗に示し始めていたためである。彼の脳裏にクリスの横顔が浮かんだ。

「それは違います」クララは首を横に振り、彼の出した答えを一蹴する。「記憶の予測や認識に誤りはありません。しかしユウト。あなたがそれらから導き出した結論には、お母様だけでなく、あなた自身のことを想う気持ちが足りていません」彼女はそう言ってユウトの頬に手を伸ばす。「付け焼き刃の答えでは同じことの繰り返しになるだけなのです。記憶の修復とともに、超自我までもが回復してしまったのですか?」

「記憶の中にも手掛かりはあるわ」テレサはクララの横顔を見つめる。「それはあなたもわかっているでしょう?」

 クララは口をつぐむ。明確なストレスこそ感じてはいたが、一体それで誰を責めればいいのか彼女にはわからなかった。ここには始めから、彼しかいないはずなのに。

 ユウトは困惑する。またもや会話の尻尾を見逃してしまったようだった。「俺は、間違えたんですか?」

「端的に訊きます」クララは深く息を吐いてから、その鋭い眼光で彼の瞳を強く睨みつけた。それは恨みではなく、願いを乗せたものだった。「ユウト。あなたは今、生きたいのですか?」


 海の上空で体を何度もくねらせながら、マリーは何度も何度もタクトを振るい続ける。白のワンピースが激しく風に揺れる。白騎士の目には彼女が踊り子のように映った。攻撃魔法と召喚魔法を中心とした彼女の波状攻撃が、白騎士の死のみを目的として動いていた。それらひとつひとつの魔法には致死的な量の魔力が込められており、たとえかすり傷でさえつけられたとしても、白騎士の存在が完全に消滅させられてしまうことは火を見るよりも明らかだった。彼はその未来がうっすらとでも見えてしまうことがとても不愉快だった。だから彼は彼女の発動する魔法に応じて、逐一同じ規模の魔法を発動させ、それらをぶつけて相殺させていた。マリーの発動する魔法は純白、白騎士の発動する魔法は漆黒の色を纏っていた。

「お前のせいで、お前のせいで!」マリーは力任せにタクトを振るい、弩級の魔法を連発する。炎の大蛇と稲妻の巨鳥、そして彼女のタクトから放たれた鋭い閃光が、二人きりの青空を塗り替えていった。

 瞬間、白騎士の瞳がそれらの三方向からの魔法攻撃に対してぎょろぎょろと機敏に動く。それから間を置かずに手元でタクトをジャグリングのように高速で回転させ、彼女と同じく三種類の魔法を発動させた。水の大蛇と石の巨鳥をそれぞれ彼女の同形の魔法にぶつけ、彼女の放つレーザーには槍の時と同じく、到達する場所に魔法エネルギーを集中させて対応した。幻の中とはいえ、無駄に今までその戦闘能力を丁寧に研ぎ続けてきたわけではない。「お前、赤なんだろう?」と白騎士は問う。

「だったらどうするのさ」彼女はタクトを大きく振るい、その軌道上から大量の誘導レーザーを発生させた。レーザーはそれぞれ独特な動きを見せながら白騎士の方へと接近し、やがて背後や頭上などの彼のあらゆる死角へと陣取る。彼女はそれを確認する前にタクトをレイピアの形に変形させ、地上でそうしたように、白騎士へと高速の突きを繰り出していた。しかしその真っ直ぐな剣筋は白騎士のロングソードの剣先によって器用に捌かれ、やがて二人は鍔迫り合いの状態となった。凶器がお互いに擦れ合い、火花を起こした。「私を追い出したいんでしょ?」彼女は白騎士の兜を睨みつける。闘争心の開放によってだろうか、彼女の口元にはうっすらと笑みが浮かんでいた。

「当然だ」予断を許さない鍔迫り合いのなか、白騎士は魔法エネルギーに対しての感覚を最大限に研ぎ澄ませる。死角からの攻撃へ対応するにはそれしか方法はない。ここで命を落すことは極めて危険である。「元居た場所に戻るがいい。お前には本来、ここは関係ないはずだろう」鎧の下で、彼の瞳は憐みの色を映していた。

「心配だったんだよ」とマリーは呟く。「ずっと心配だったんだ。わからない?」

「俺にまごころを求めるんじゃない。俺は存在そのものが手段でしかないのだ」俺は駒でしかないのだ。それだけはいつだって変わらない。

「そうだよね」マリーは目を伏せ、鍔迫り合いを解いた後の行動をひと通り考える。そしてそれから彼女は再び白騎士の兜を強く睨みつけた。「お前には人の血が通ってないんだったね」白騎士の体勢をよろけさせるために彼女は高速で後退し、それと同時に待機させていた誘導レーザーのそれらすべてを彼へと向けて発射した。レーザーたちは白騎士の座標にてカラフルな爆発を起こし、その魔法の光は彼の姿を完全に隠してしまった。マリーはストレスに歯を食いしばる。レーザーから確かな手ごたえを感じることができなかったためである。軽い。この爆発はレーザー同士の衝突によるものだ。マリーはレイピアをタクトの形に戻し、それをその爆発へと向けて両手で構えた。爆発越しならばあちらの視界も殺されているだろうし、エネルギーが周囲に充満している今ならばサーチ魔法も鈍るはず。決めるのならこのタイミングだ。彼女は手首の辺りにでき得る限りのエネルギーを集中させ、やがてそれらを一度にタクトへと注入する。「妖精、ビィイイイイイイイイムッ!」タクトからは純白の強烈な閃光が放たれ、爆発により発生していたカラフルな魔法の色を掻き消していく。青い空に、その温かい白がみるみるうちに広がっていった。結局また何かしらの魔法で対応されるのだろう、と彼女は思っていた。しかし意外にもその手ごたえは抜群だった。光線は間違いなく何かにぶつかっていた。それはエネルギーから伝わる摩擦と屈折から容易に感じることができた。今ならば殺すことができる。マリーは魔法エネルギーを体内に余さぬよう慎重に、体の奥底からぎりぎりと絞り出した。もっと、もっとだ。この屈折が消えるまで。その摩擦が消えるまで。

「マリー」光の中から魔法を媒介として声が伝わる。「マリー。もう終わりだ」

「嫌だ、終わらせないよ」マリーはその破壊魔法へと更にエネルギーを加えていく。何度も何度も重ねて同じ魔法を発動させた。魔法の重ね掛けはその効果が逓減していくことを彼女はよく理解していた。だから本当に破壊魔法の出力が上がっているのか否か、彼女自身にももうよくわからなくなっていた。彼女はただ、そうせずにはいられなかっただけなのである。「ここで終わらせたらユウトの幸せはどうなるんだ。許さないよ。お前だけは絶対に」

「心配をかけた」光の中から再び彼女へと声が伝わる。その声は先程よりも大きく、彼女の頭を響かせた。「でももういいんだ。全部思い出したから」

 マリーは破壊魔法の中のその異物に接近を見る。「危ないんだよ?」異物は光の中で接近を続ける。それは歩くような速さで、着々と彼女の元へと近づいていた。「危ないんだって」彼女の瞳が滲み出た涙に濡らされる。声も上擦ってしまった。それは恐怖によるものではなく、未来という概念に対する不安によるものだった。

「危なくなんかない」声が伝わる。「俺は今、この絶望のかたちを正確に測ることができている。だからもうこれは絶望じゃないんだよ」

「前に進むの?」

「そんなに大層なことはできないかもしれない」ユウトはそう言ってマリーの白い破壊魔法を片手で振り払う。それと同時に彼が魔法という概念の一切をその世界から削除してしまったために、彼女がそれ以上魔法を出力することはできなくなった。彼は彼女の視界の中、タクトを右手の中でへし折って見せる。それから彼女に少しの照れ笑いを見せてやった。「俺は試しに生きてみるだけだから」彼の首に結ばれた純白のマントが、風を受けて雄々しく靡いていた。

 マリーは砂浜の方を一度見てから、再びユウトのマントのはためきを眺めた。「白騎士もみんなも食べちゃったんだ」

「俺は臆病だから」ユウトはそう言って指で頬を掻く。

「そんなことないよ」ユウトの頑なな想いを前に、マリーは大粒の涙を流す。「ユウトは十分頑張ったんだもん。このくらいの何が悪いっていうのさ」彼女の声には幼子のそれのようにところどころ嗚咽が混ざった。

「多分、力の入れる方向を間違ったんだよ」ユウトは再び照れ笑いを浮かべながら、空を踏みつけ、彼女の方へとゆっくり近づいていく。彼はその際に遠くの景色を適当に見回した。既に周囲のほとんどがキャリアのノイズに包まれてしまっているようだった。「この楽園は本当に楽しかった。きっと起きたらすごいすっきりしてると思うぜ」彼はやがてマリーの目の前でその足を止める。

「ねえユウト」その赤く腫れた目で、マリーは彼の瞳を弱々しく見つめる。「私ね、ユウトのこと、好きだったんだよ」

「ああ」彼は優しく微笑みを返す。「俺もお前のことが好きだった。記憶がなくてもわかるよ」

 マリーは照れ笑いと浮かべると、それから涙と嗚咽を一生懸命に抑えていった。「次は、多分来れないと思うから」

「ああ、俺も今度からはお前を呼ばないようにするよ」

 マリーは彼へと両手を伸ばす。「抱っこ」彼女の背丈は少しだけ小さくなっているようだった。そして彼の背丈もまた、彼女の瞳には幾分か小さくなって映った。

 彼は何も言わずにそれに行動で応えた。彼の全身の触覚は彼女の存在に対して全く反応しなかった。温度もなかった。クララのときにそうだったように。

「私、ずっとユウトの生の本能だったんだよ」彼女は彼の胸の中でそう言った。

「ごめん」とユウトは返事をする。

「ううん。私、嬉しかったんだ。今でも赤の器に選んでくれるんだなあって」

「うん」

「憶えててくれてるんだなあって」

「うん」

 温かい静寂が二人を包み、そこに永遠を作った。

 ふと目を開けると、もう彼女の姿はそこにはなかった。ユウトは左腕に巻かれたブレスレットを見つめる。そこにはもう赤のビーズが加えられており、既にブレスレットは僅かな欠陥をも認めることができない完全な状態となっていた。何かを言おうと彼は少し口を開けたが、その無意味さを悟ると、彼はぽっかりと開いたその口を閉じた。キャリアのノイズはもう彼の目と鼻の先にまで迫ってきていた。ユウトはその接近に対して静かにその目を閉じた。さあ、あちらに連れて行ってくれ。彼は心の中でそう呟く。

 やがて嗅ぎ慣れた匂いがした。やがて聞き慣れた音がした。ユウトはその目を再び開く。目の前には巨大な両開き扉があり、そこには錠前が掛けられていた。匂いや音がその向こう側から絶えず漏れ出す。「これが、扉」と彼は呟く。その声は誰の耳にも届かず、周囲を包む闇へと吸い込まれていくばかりだった。「俺はもう、あちらの世界に絶望していない」彼はそう言って、ブレスレットの巻かれた左手を錠前へと向けた。ビーズが闇の中で弾け跳び、集約され、やがて一本の鍵となる。彼はそれを握り締め、胸のところへと持って行く。目を閉じて祈る。「俺はもう大丈夫。絶望はそこにただ在るだけ。心までは食われていない。過去も未来も動きはしない。自分の心を旅したように、誰かの心だって歩けるはず」彼はやがて目を開ける。純粋ではなくとも、その目には確かな希望の色があった。彼は錠前に鍵を突き刺し、そして捻る。錠前は砂となって消え、扉は向こう側からの眩い光によって開け放たれた。彼は闇の方を一度振り返る。「ありがとう、真理」彼はそう言うと、再び扉の向こうの光を見据えた。絶望の隙間から希望の匂いや音がする。今ならばそれらが美しいものだと判断することができる。それは長くは続かないことかもしれない。しかし少なくとも今は、間違いなくそう感じることができた。純白のマントが光に揺れる。彼は光の中へと歩み始める。扉の向こうは、魔法のない不思議な世界だった。

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摩擦追憶インフィニティ @kashikomugi

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