エピローグ

調律を果たした想区は元通りの物語へと姿を戻す。だが、そこにあの『マキナ』は存在しない。

これはアラジンの想区でも経験した辛い経験だ。

一行は傷心を胸に、次の想区に向かう。


「…ま、なんていうか。まさかこんな想区があるなんてな」


無言の空気に耐えられないタオが話を振る。


「自分自身がいる想区なんて、不思議な想区もあるもんです」


「…ホントだね」


「ところで新入りさん」


「ん?なに?」


シェインが口元に人差し指を当てて視線を空に向けながら疑問を投げかける。


「彼女?は新入りさんが【なりたかった自分】なんですよね」


「まぁ、そうだね」


「シンデレラと幸せに過ごす自分がどうして『女性』なんです?」


「うっ……それは……」


むしろ女性だったのか?と聞きたかったが、エクスの反応を見る限り、マキナは女性だったようだ。


「はぁ…やっぱりただの変態でしたか…」


「シェインよ、男には一時期だが女体化願望をいだく時期があってだな……」


恥ずかしそうにうつむくエクスの横で、タオがフォローを入れる。


「ち、違うよ」


「なんだ、やっぱりああいう身体になりたかったのか?」


「まぁ、男のコだもんね……」


「そうじゃなくて……」


遠い日の記憶の片隅で、幼馴染が言ったセリフがよみがえる。

無邪気に遊んだあの頃の、子どもの何気ない一言だ。


『エクスが私の妹だったらよかったのに』


姉達にいじめられていたシンデレラが願った願望。それは、自分が姉であれば妹を絶対にいじめないという一言だった。


「彼女の…すべてを叶えてあげられたらと、思ってたんだ」


「まぁ、世界は広いです。同性婚も認められる世界もありますよ」


「そ、そんなのどうでもいいよ!……みんなだって、もしかしたら自分でそんな話作ってたかもしれないし……そういった想区もあるかもしれないよ?」


「俺はそんなもん作らね……あ」


「タオ兄?」


「い、いや、なんでもねぇ」


「そ、そうよ!あるわけないじゃない!ほほほほ」


「姉御も顔が引きつってますよ?」


「うっさい!」


「何はともあれ、タオ・ファミリー!次の想区もガンガンいくぜ!」


―fin―

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夢の想区 しろくじら @amesirokujira

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