10月31日【孤独を嫌い、他人を愛す貴族達】

そして、少しの間静寂が続いた。

「はー……もう疲れた」

笑い疲れて眠気が襲ってくる。

「帰ろっか」

返事がない。不思議に思って隣のリーリュを見ると、なんと寝息を立てていた。たったこれだけの時間で寝るなんて、凄く疲れてたんだね。

寝顔は昔と変わらない。あどけなさの残る、普段と違うリーリュの姿。これを見ることが許されるのは、特別な人だけ。

「……変わらないね。時間が流れていることを忘れそう」

時間は流れている。それは、この世が無常だということ。いつか変わってしまい、いつか無くなってしまうということ。

「それでも、変わらないって思ってたいんだ。リルもルナもタッカも、僕から離れないって。一緒にいられるって信じてたいんだ」

まだ、が何回も重なって終わりが来る。

それでも良い。未来があると信じていて何が悪い。


明日も明後日も明々後日もその後も、ずっとこの幸せが続くと思って生きていることこそが幸せでしょ?


「あーあ、僕が連れて帰んなきゃいけないのかー」

とは言っているものの、本心は真逆なのだ。天邪鬼な自分は嫌いじゃない。



「……僕はきっと、誰よりも独りになりたくない。独りになりたくないから、誰にでも優しくするのかもしれないね」



孤独が嫌だから不安になる。相手に求めてほしくなる。

それは、最初から誰もが持っている自己中心的な思いだろう。ただ、それが表面に現れるかどうかの話で。


異端児であろうと、リーリュもセシルも、本質はどこまでも吸血鬼なのであった。


さぁ、楽しいハロウィンが終わってゆく。

魔界の素晴らしい思い出が満ちていく。


今宵の空に魔女が浮かんでいたこと。今宵の街に人間ではない者がいたこと。

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ハロウィンの貴族達 歌音柚希 @utaneyuki

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