第2話 すれ違い
第2話 すれ違い
タオ似の青年の話では、この村であんなバケモノ、いわゆるヴィランは今まで見たことがないという。
ただ、青年が生まれるずっと前に現れた事があるような事を聞いたことがあるらしい。
しかし、この村で今のところ異常という異常は特になく、話の中にカオステラーらしき存在も感じられず、何故あんなバケモノが出てくるのかわからなかった。
ヴィランに関しての話が終わったところで、タオ似の青年が、
「君たちが手にしているその白い本を、ちょっと見せてくれないか?」
と立ち上がった。
タオは、自分が持つ空白の書をタオ似の青年に見せると、
「これは・・・・
実は、俺も同じモノを持ってるんだよ。」
と言って、自室から空白の書を持ってきて、一行に見せてきた。
そして、タオ似の青年が持ってきたその本は、レイナ含め自分達が持つ空白の書そのものだった。
疑問に感じたレイナが、タオ似の青年に、
「この本をなんであなたが持っているの?」
と尋ねると、
「この何も書いていない真っ白な本は、村人全員が生まれた時からずっと持っている本なんだ。
そして、この何も書いていない本は、必ず自分達で保管するようにと昔から言われているけど、みんな好きに使っているよ。
実際、この村ではそんなに珍しいモノじゃないからな。」
といって、何気なく空白の書を見せ合うようにタオ似の青年が空白の書を持ったタオに近づくと、2冊の空白の書が呼応するかのように共鳴し合い、辺り一面光に包まれた。
直後、タオの持つ空白の書とタオ似の青年が持つ空白の書から、同時にヒーロー達が現れた。
一瞬の事で、皆一同に何が起こったのかわからなかった。
光は落ち着き、そのまま通常の書に戻っていった。
突然の光に驚いたエクス似の少年が、家の奥から駆け足で飛び出してきた。
「どうしたの?!
さっきの光は何?!
その本がどうかしたの??」
エクス似の少年は、2冊並んだ空白の書を目にし、不思議そうな顔で立っている。
眩しい光は一瞬ではあったが、家の外にも洩れていたようで、驚いた様子の老人がエクスとタオに似た兄弟の家に突然入ってきた。
その老人は、この村の長老。
光輝いた現象はもちろんではあったが、長老は村人にそっくりなレイナ一行の見た目に一番驚いた様子でいる。
同じ顔がこうも揃っているのだから、驚かない方が不思議なのかもしれない。
しかし、その驚きは異常な程で、そのまま呼吸が止まってしまいはしないかというくらい驚いている。
タオとタオ似の2人が持つ2冊の空白の書を目にした長老は、ため息のような深呼吸をし語り出した。
「この村には、古い言い伝えがあるのじゃよ。
その言い伝えとは、
“己が身と鏡映し者現る時、己がすべき全てを理解するだろう”」
長老の言葉に、エクス似の少年は、
「その言い伝え、僕も聞いたことある・・・」
と、何かを知っているような雰囲気だった。
タオ似の青年も、何も言わなかったが、やはり聞いたことがあるのか、何か気になる事があるような顔をしている。
困惑する一同の雰囲気に気づいていたが、長老はそのまま話を続けた。
「おまえ達若者も、この言い伝えを少しは耳にした事があるじゃろう。
しかし、この言い伝えには続きがあってな、
“そして、己が身と鏡映し者現る時、異形のモノもまた現る”
という話なのじゃ。
さっき、村はずれの草原でバケモノに遭遇したそうじゃないか。
それはきっと、こいつらが現れたから出てきた言い伝えのバケモノそのものじゃろう。
申し訳ないが、君たち、すぐこの村から出て行ってはくれないじゃろうか。」
といって長老は、ドアを開け、レイナ達を外へと誘った。
納得のいかないレイナは、どうしても、この想区の事が気になって、もしかした協力出来る事があるかもしれないと、今までの旅の事、自分が調律の巫女で何度もバケモノ達と戦ってきたということを長老に話した。
長老は納得したようには見えなかったが、レイナの話を信じているようでもあった。
「ならば、条件というわけではないが、村の北に祀られている祠に行ってきてはくれんじゃろうか。
最近、その辺りでバケモノを見たという者がおってな。
もし、お主らの言う通り、害無き者達というなら、そのバケモノを退治しこの村を救ってくれんじゃろうか。」
長老の出した条件をクリアする為に、レイナ達は北の祠を目指し兄弟の家を後にしようとした。
その時、レイナ似の少女が一行に近づいてきた。
「私が連れて行くわ。
あなた達だけじゃ迷子になっちゃうでしょ。
私だって、この村では一応巫女って事になってるんだから、祠まで案内するわ。」
どうやら、北の祠まで案内してくれるようだ。
でもその少女は、一応レイナ似の少女。
レイナ以外、皆が同じ事を思った。
(レイナに似てるから、やっぱ方向音痴なんじゃ・・・)
どんよりと心配に感じている一行に、シェイン似の少女がレイナ似の少女の後ろから話しかけてきた。
「この一応巫女をやっている姉御は、道に迷うこともありますが、ほぼ毎日祈りを捧げに北の祠まで行っているので、安心してください。」
「ちょっと!
それはどういう意味かしら?!((怒)
ちなみに言っておくけど、さっきあなた達と会った時も祠からの帰り道だったんだから。」
その言葉に、レイナ本人以外は、一同に同じ事を思っていた。
(やっぱり、そこまでそっくりなんだ・・・
そもそも、さっきの草原は村からすると南側だったような気が・・・)
心配に感じている一行ではあったが、一応通い慣れているというレイナ似の少女を信じ、北の祠に向かって出発した。
思いの外道に迷わず北の祠に到着した一行。
しかし、目の前の祠にはヴィランの群れがうようよ発生し、あちこちに溢れかえっていた。
一行は物陰に隠れ、ヴィラン達の様子を見ていたが、祠から離れず、ただ周りを俳諧しているようだった。
ヴィラン達にほぼ占領されてしまったような祠を見て、レイナ似の少女が小さく震える声で言った。
「さっきまで、あんなバケモノ1匹もいなかったのに・・・」
ここで隠れていても何も変わらない。
そう感じたレイナ達は、怯えるレイナ似の少女を物陰に残し、ヴィランの群れに突っ込んでいった。
予想を遙かに超える数のヴィランの群れ。
一行は傷だらけになりながらも、なんとかヴィランの群れを一掃しきった。
そして、物陰で怯えるレイナ似の少女の無事を確認し、一行は村に戻っていった。
村に帰る途中、レイナがぼそっと、
「やっぱり、私たちがこの村に着たからヴィラン達が出てきたのかしら。
そうしたら、私たちがこのまま村を出て行けば、ヴィラン達も現れないって事になるのよね・・・」
その言葉に、皆が納得し小さくうなずいた。
帰り道、何故かさっきと違う場所を通り、少し道に迷ったのか多少時間はかかったようだが、村に戻ってきた一行。
村の入り口で待っていた長老にレイナは、
「たぶん、私たちが来たからバケモノが現れたってのは本当なのかもしれない。
だから、このまま私たち出て行くわね。
騒がせてごめんなさい。」
と言って振り返り、一行がそのまま村を出て行こうとした時、
「ちょっと待ってくれないか!」
聞き覚えのある声に呼び止められた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます