『旅機人』より『あとがき』

 世界は終わった――管理者アドミニスターの支配する世界は終わっていた。

 皆の知っているように、あれからしばらくの時間が過ぎて、世界が青空を見せた時に気づいた。人間の世界がやって来たことを。


 これは、私の友人が突き進んだ旅路の物語を脚色して描いたものだ。私の最初の作品、『旅 ―機械と人―』の道中の事である。これを物語としたものだ。

 最後の物語は、私にとっても想定外が過ぎて、このような形式になった。

 中には非現実的だと言う人もいるだろうが、私はそれでも良いと思う。


 あれから何十年も経った。

 あの曇天の空、灰色の高原を知る世代も減っただろう。今や、知らない世代の子たちが世界を作る時代だ。

 それで良いと思う。ただ、過去を捨ててはいけない。過去を忘れてしまえば、人はいつか繰り返すからだ。


 彼らの物語は――いつまで続いただろうか。

 あの後、すぐに終わったのかもしれない。もしかしたら、今でも続いているかもしれない。

 彼らはストレンジャー――あの管理者の世界における最後の旅人であり、この人が作る世界における余所者だ。

 終わった世界を見つめた者。始まった世界を見つめゆく者。

 私の知る彼らは、そういう人たちであった。


 どうか、彼らの旅路に祝福を。そして、この世界に祝福を。

 旅をする機人リシティ機械と共に歩む旅人エメ人と生きる旅機ヘキロウの物語が、この世界の一つとなりますように。


 一秒先の未来を信じて、この世界に生存した――彼らの物語を、私は書き綴らせてもらう。



『旅機人』

       著 ライト・アルト

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