お姉ちゃん

 私、天宮煌羅あまみやきらら。大学三年生の二十歳はたち。私は今、誰にも負けない、幸せに満ちた素晴らしい日々を送っています。


 なぜなら――――


「……お姉ちゃん、きららお姉ちゃん、遅刻するよ? ねえってばぁ」


 そう。可愛い妹と一緒に楽しく暮らしているからで――――


「――――すぅっ!? って、ええっ!?」


 朝、いろはちゃんを困らせようと思って、二度寝を慣行していた私。しかし、その目論みはいろはちゃんが私に言った一言で、瞬く間に崩れ去りました。具体的に言うと、びっくりしすぎた私が目的を忘れて飛び起きたから。


 お、お、お姉ちゃん!? わたしが!?


「な、な、何がどうなってるの!?」

「ふふっ、おはよう、お姉ちゃん♪」

「えっ、えっ? ここは天国か!?」


 つい叫んでしまった。

 と、クスクスといろはちゃんが笑っている。

 ……しまった!!


「今日はいい天気だね、きららおね~ちゃんっ♪」

「くふぅ……」


 か、か、可愛い!! 可愛すぎる……!!


「ほ~ら、早く起きて! 本当に遅刻しちゃうよ? お姉ちゃん早く布団から出て! っむぐっ!」

「ちゅぅぅぅぅっ♪ ぷはぁ。ふふっ、いろはちゃんが悪いのよ。ちゅっ♪ ……そんなにちゅぅぅ……

 可愛くするから……れろっ♪」


 いつもより長いおはようのキス。

 いろはちゃん――松風まつかぜいろはちゃんは二つ年下の一年生。そして私の恋人だ。

 私たちは大学の先輩と後輩で、長く家の都合で会えなかったけれど、今年の夏休みに再会した。


「――――くちゅっ。……いろはちゃん、なんで妹キャラなの?」

「も、もうっ! 急にキスしないでよぉ……。今日ね、姉の日なんだって。私年下でしょ? だから、きららちゃんをお姉ちゃんって呼んで姉の日感を出そうと思って」

「…………それだと妹成分が強すぎて、妹の日なのか姉の日なのか分からなくない?」

「……………………」


 あっ、いろはちゃんが黙りこんだ。

 何かに気付いて黙りこむといつもこう。難しい顔をしているけれど、そんないろはちゃんも可愛いっ♪


「…………確かにそうかも」

「でしょ?」


 この時のいろはちゃんは何をされても気付かないから、軽く頬っぺたをつついて遊んでいると、バッと顔を上げて、そう言ってきた。


「う~ん、いい考えだと思ったんだけど……」

「それでも十分姉の日として通ると思うよ? それに可愛いから気にしな~い♪」

「きゃっ? きららちゃ――お姉ちゃん、耳は、らめぇ…………」


 きゅっ♪ と後ろから抱きついて、いろはちゃんの弱点、耳にふ~っ♪ と息を吹き掛ける。


「いろはちゃん可愛いっ♪ ……もっとしちゃお。ふ~っ、ふ~~っ♪」

「ふぁぁぁんっ♪ ひあっ、らめっ、てぇっ♪ おねえちゃん、の、いじわるぅ……」

「ふふっ、ごめんね、いろはちゃん♪ これで許して……。ちゅぅぅ♪」

「ちゅぅ……。こ、これで許されるなんて、思わないでっ」


 とか言ってるのに、表情は嬉しそう。……これがツンデレってやつでしょうか。

 はぁん、もう、可愛すぎて困ってしまいます♪


「ちゅっ♪ ちゅぅぅ、ちゅっ♪」

「も、もうっ、言った側から……。……えへへっ」


 本当の目的からは外れた気がするけれど、幸せなのでよしとします。


 …………この後私たちは、夢中になりすぎて、遅刻ギリギリまでずっとキスをしていました。

 キスだけでは物足りなかったけれど、とっても幸せです♪


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大学生の大家さんと下宿人 (連載Ver) 五月雨葉月 @samidare_hazuki

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